新連載
 その78 蟻に悩まされる電柱の通信基地局 


                雨の多いタイのアリにとっては天国

 日本からいろいろな通信設備が海外へ輸出され、設置されてきた。携帯電話やPHSなど無線通信用の機器には、基地局という電子機器が屋外に設置される。市街地では建物に設置されることが多いが、少し郊外にでると、電力用や通信用の電柱が取付場所となる。これらの電子機器の中に蟻が入り込んで悪さをする。
屋外用の機器は、たいてい鉄やアルミニウム製の箱に納められている。この箱には、電源やアンテナを接続するためのケーブルを通す孔をあけてある。また、雨水が入った場合の水抜き用に小さな穴があいている。ここから蟻が入り込んできて、トラブルの原因となる。

日本でもマンションの天井や壁の中に蟻が巣を作ることはある。しかし、たいていは地中である。冬の寒さで地中や特定の場所でないと生き残れないからである。タイの湿地帯や雨の多い地域では、この日本の常識は通用しない。雨季には、田んぼや畑はもちろんのこと、道路まで冠水するほど雨が降る。タフな蟻も水はどうにもならないらしい。タイのアリ達は生き残るために電柱に登るのである。いくら水の多いタイでも電柱の中ほどまでの洪水はまずない。電柱に取り付けられた箱は、「ここなら安全」と考えるのであろう。蟻にとって格好の避難場所になる。
通信用の機器には、無線送受信機が入っており、電子回路用プリント基板が取り付けられている。このプリント基板には、はんだ付けのために松脂が使われている。この松脂も蟻にとっては好物のえさになるようだ。蟻が群がっていることもある。まず、タイでは、寒さの心配はない。水からも逃れられ、えさもある電柱上の通信機器の箱は、蟻にとって天国のようなものであろう。

蟻も数が少ないうちは問題ない。また、雨の時にだけあがってきて雨宿りしてくれるだけであれば問題はないが、ここに住み込んでしまうから始末が悪い。仲間を呼んで、数が増えてくると蟻が大量に酸、蟻酸を出すようになる。また、長期間経つと蟻の中にはこの箱の中で寿命の尽きるものが出てくる。蟻は死んだ仲間を一個所に集めておく習性もあるようで、いくつかの機器の中には蟻の死骸が小さな山になって発見される。この蟻酸と蟻の死骸の山が電子回路を断線させたり、ショートさせたりするのである。日本では全く経験することのない事故である。

被害を防止するために、機器に蟻が入り込まない対策をしなければならない。蟻の入りそうな穴や隙間を密封したり、蟻の嫌いな薬品を使用するなど、しばらくの間、蟻と知恵比べとなる。蟻の種類にもよるが、これといった対策はなかなか見つからない。最も確実な対策は、蟻が中に入り込まないように隙間や孔をなくして完全に密閉することである。布やゴムなど天然資源を原料とするものは、たいてい食いちぎられて対策にならない。プラスチックやビニールも薄手のものや柔らかいものは食いちぎられる。結局のところ、細かい目の金属製のネットを張り、隙間のできないようにネジで締め付け密閉するのが最も有効な対策となる。


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