新連載
 その71   深センの最先端企業


                 アメリカ通信機製造企業の開発部門

  深センのIT関連通信機器製造企業を訪問した。この会社の本社はアメリカにあり、深センのこの部門は、研究開発を担当する。会社の中での会議など使用言語は、原則英語である。経営者は、中国人であるが、アメリカの企業で働いた経験がある。アメリカの先端大手企業で、開発担当している中で、その能力を認められてヘッドハンティングされた人材が多い。従って、アメリカでの生活経験と会社での実績もあり、英語も不自由しない社員がほとんどである。

 この会社は深セン市の科学工業団地のなかにある8階建てのビルのワンフロアを借用している。スケールが異なるが日本で言う雑居ビルである。香港もそうであるが、深センやこの周辺の企業は、フロアごとに企業がレンタルで入居し、経営しているケースが多い。
 ビルの一階には、プラスチック成形工場が入っている。重量の大きい成形機を多数必要とするために一階を占めているようである。この成形企業を入り口から覗いて見ると、今では日本では使用されていないような古い成形機械を使用している。工場内は、暗く、整理整頓の状態も良いとは言えない。そのほかのフロアには、広告会社や、何をしているか判断がつかないような事務所が入居している。科学工業団地の一つなので比較的最先端の技術を必要とする企業が多い筈であるが、実態は技術的に最先端の企業と古い設備を今でも使って生産している企業がまさに雑居している。

 このIT関連企業の開発部門は、先端企業だけあって、イーサネットを使用したLANを構築、事務所のすべての部屋と会議室の壁には、どんなタイプのIT機器にも対応できる端子が設置されている。パソコンを持参すれば、目的に応じて自由に使える。電話用のモジュールジャックも、社内の電話交換機(PBX)を経由した回線と直接しない回線の二種類が準備されている。AC電源用のコンセントとテーブルタップの数も不足はない。すべてインターネットを使用することを前提とした回線が準備されている。私用で使っても、会社用に使っても、電話代はまったく気にする必要はない。勿論、セキュリティについても十分配慮がされている。
 会議室にはパソコンを接続できるプロジェクターと大きいスクリーンが常備されている。パソコンを持参すれば、直ちに準備した資料でプレゼンテーションができる。パワーポイントを使用して、プレゼンテーションし、会議することが当然になっている。最近、日本でもこの種の設備が整えられている企業が多くなってきたが、深センではこの種の企業が非常に多くなっている。むしろ、IT化の遅れている日本企業の実態を憂慮すべきであろうか。

 会社は、朝9時始業であるが、フレックスタイムであり、拘束はされない。しかし、彼等は、朝9時には、ほとんど出社する。中国人は一般的に早起きであるので9時開始は問題ない。経営トップも含めて服装はカジュアルで誰もネクタイをしていない。我々は、訪問した手前全員ネクタイを着用していたが、違和感がある。早速、全員ネクタイを外し、この会社の社員に合わせた次第である。
 昼の休憩時間は、12時から2時までの2時間である。休憩時間が2時間である以外、日本やアメリカの企業と大きな違いはない。この2時間の間に会社のカフェテリアで昼食をとり、休憩する。休憩時間が長いために昼寝をする社員が多い。たいていは、事務用の椅子を2つか3つ並べて、その上に横になったり、事務用の椅子に後ろ向きに座り、背もたれにうつぶせになっったりして眠る。会議室が空いていれば、拝借して休養する。面白いことに、社員の中に小さな布団を持ち込んでいる人がいた。椅子を脇によけて、机のすぐ横の床に布団を敷き寝ている。さすがに布団を持ち込んでいる社員は、彼一人のようであったが。会社も、他の人に迷惑を掛けない限り制限しない。最先端の研究開発を担当するこの企業では、午前中の仕事の疲れを休憩時間に完全に取り除き、午後の仕事に集中してもらうようにしているようである。
 中国の企業では、たいてい昼休みは1時間である。生産工場では、効率を上げるために休憩は交替で取り、昼の間も生産設備は止めないところもある。経営効率を重視する最先端企業では、人間重視で、個人の負担を少なくし、効率を上げる方法を採用する。中国にもこのような新しい考えの会社が多くなってきている。


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