新連載
 その69 香港経由で中国の深センに入る


                      一国二制度を実感
 香港は中国に併合されたが、実感としては、まだまだ別の国である。中国の深センに入る交通手段には、列車、フェリーボート、バスなどいくつかあるが、どのルートを使用するにしても、更に入国手続きが必要である。深センには空港があるが、中国の国内線が主体であるため、日本から直接訪問するには香港経由の飛行機が最もポピュラーである。荷物が少ない場合や時間に余裕のある場合には、列車やフェリーボートを使用するのも変化を楽しむことができて面白いが、初めての訪問には香港経由が無難であろう。
 最初から深セン市に滞在するつもりであれば、訪問する相手方に頼むかしてホテルを予約しておくことである。深センの各ホテル行きのバスシステムは大変良くできている。香港の空港で入国手続きを済ませて外へ出るとバスに乗る人のために係員が待っていてくれる。滞在するホテル行きのバスが決まっていて、係員が寄ってきてどこのホテルかを確かめて、上着やシャツにブルーやオレンジ色のシールを貼ってくれる。このシールの色で指定のバスに案内する。極めてシステマティックで、指定のバスさえ間違わなければ、予約したホテルへ問題なく案内され、不安はない。

 ただ、これで入国手続きが済んだと勘違いしてはならない。香港が中国に併合されたので、これでもう中国へ入国したと思ってはいけない。深センに入るためには、一旦香港を出国し、更にもう一度深センに入るための入国手続きが必要である。
 バスで深センに入る場合、手荷物はすべて持ってバスを降り、出国審査窓口へ行き、パスポートを見せ、スタンプをもらう。時刻にもよるが混んでいると外国人の場合、列に並んで20分や30分はかかる。出国審査が終わると再び乗ってきた同じバスに乗り込む。運転手や車掌は心得ており、全員がバスに戻り、揃うまで待っていてくれる。入国審査にトラブルが発生する人がいるとその人が終了するまで、待たなければならない。

 運転手が人数がを確認すると、バスは出発し、香港と深センの間のニュートラルゾーンを5分ほど走る。次は深センへの入国審査である。荷物を全て持ってバスを降り、入国審査の窓口に行く。ここでも同じように20から30分かかる。入国審査事務所の外では、滞在するホテルごとに別の指定のバスが待っている。外国人が大勢入国する時間帯には、それだけ時間が掛かる。両方の出入国審査に1時間30分くらい、時には2時間くらい要する。香港飛行場から出国審査事務所、深センの入国審査事務所からホテルまでの時間を予め計算しておかないと、香港に遅く到着する飛行便では、ホテルに到着する頃は真夜中と言うこともありうる。飛行便の選択には注意したい。深センから香港に出るためにはこの手続きを逆にたどる。朝が早い香港発の場合、前の日に香港に入っていないといけない。
 このような出入国手続きのために、香港と深センの間を一往復すると、パスポートには合計6つのスタンプが押される。小さくなったパスポートは、一往復で1ページがスタンプでいっぱいになる。ニュートラルゾーンを通過し、出入国を2回繰り返すこの手続きは、一国二制度を実感させるに十分である。

 香港に住んでいて香港と中国本土を頻繁に往復する人や特別許可された中国人のためには、特別の出入国カードが準備されており、短時間で手続きは済む。勿論窓口は別になっており、我々外国人とは異なり、長打の列を横目にスイスイと手続きを済ませる。ただし、中国本土に住む人が香港へ出国する場合には、その手続きは厳しいようである。中国人は香港にさえ簡単には出ることはできない。香港は、中国人に取っては、まだ外国と同じくらいの位置づけにある。


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