新連載
 その68 メンツをつぶさないように叱る


                  日本的な叱り方は絶対通用しない

 現地従業員とのトラブルの原因にメンツの問題がある。日本人の間でも、「メンツをつぶされた」と言う話を良く聞く。しかし、海外ではその重みが違う。日本人の場合は、しばらくすれば忘れてくれるとか、付き合いが薄くなるという程度の話ですむことが多い。しかし海外では、忘れられることはなく、後日まで尾を引く。そして必ず恨みとなって、何らかの形で現れ、習慣や文化が違うことを思い知らされる。
 誰でも仕事の上で失敗をする時がある。しかし、大勢の前や他人に叱る声が聞こえるようなところで叱ってはいけない。いくら本人に落ち度があっても、大勢の前で叱られると、メンツがつぶされたということになって、必ず恨みが残る。時には生死に関る事件になることさえある。直接本人からとは知られないように陰湿に報復される場合もある。海外でトラブルには、何らかの形でメンツが絡んでいることが多い。このメンツの問題は、特にフィリピン、タイやマレーシア、中国で良くある話である。異なった文化の国では、特に叱りかたには注意が必要である。
 
 本人の失敗やミスを注意する場合には、早い機会に自分の部屋に呼んで、本人にだけ直接行うことである。そしてできるだけ具体的な行動を捉えて話をすることである。彼等は、問題点や失敗を指摘されても、なかなかそれを認めようとせず、必ず非常にうまい言い訳を考えて反論してくるからである。
 確かに、仕事で失敗を認めることは、職場を失うことに結び付いてきたし、社会生活で誤りを認めることは、罰則につながってきた。彼らの世界にあっては、失敗や誤りは糾弾に結びつくのである。失敗があれば「早目に謝ってしまった方が良い」という考えは、極めて日本的な考えなのである。
 

 また、現地従業員の失敗や問題点を指摘する時には、中途半端はいけない。「なんとなく気に入らない」とか「なんとなく頼りにならない」等と、いくら文句を言っても納得させることはできない。大きい失敗の場合は指摘しやすいが、小さい失敗の場合は、その日にちとその時の状況を詳しく記録しておき、その上で、彼等の反論を十分予測して、「なぜいけないのか」「どうして欲しいのか」など論理的に組み立てて静かに話をしなければならない。指導する際は、本人への期待や将来への展望も含めて話をする。但し、将来の昇進や昇格を約束したように取られないことである。

 日本では、大勢の前で叱ることがよく行われる。私も何度かその代表になったことがある。上司は、むしろ他人に聞こえるように、失敗の経過や原因もふくめてこんこんと叱る。他の社員に対する教育の意味も含めて叱っているのである。他のメンバーは、聞かないような振りをして、しっかり聞いている。上司は、代表で叱られた部下には、夕方ご馳走などしてフォローをするのが普通である。叱られる代表も大体決まっている。叱りやすいものとそうでないものがいるのである。しかし、毎回、叱られている部下の勤務評価がひどく悪いかというと、必ずしもそうではない。回を重ねるとだいたい感じがわかってくる。しかし、このような日本的な叱り方は、日本以外では絶対通用しない。 


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