新連載
 その53     アラブの習慣と文化
     10 熱帯魚やサンゴの美しい紅海 


                 砂の中からウイスキーの空き瓶が 

 サウジアラビアの第二の都市ジェッダ近くの紅海に遠浅の海岸がある。砂漠の岸から100メートルくらいまで、水深1メートル程の浅瀬が続く。この浅瀬には、小さなサンゴが点々とあり、美しい熱帯魚がその周りに群れをなしている。近づくとさっとサンゴの中に隠れてしまう。いたずら心でサンゴを水から持ち上げると、逃げ遅れた小さい魚がサンゴの枝の中でパタパタ動いている。
 大きい「なまこ」もごろごろ転がっている。誰も取る人がいないためか、やたら大きい。好きな人であれば、中華風に料理して楽しめるだろう。。30センチメートルほどのふぐも悠々と泳いでいる。その浅瀬のむこうの珊瑚礁には荒波がぶつかっている。珊瑚礁のその向こうは海の中の断崖絶壁だ。その先は深く黒く、何も見えない。気味がわるいくらいである。ときおりサメが現れて人間が襲われという。日本では見られない自然がたくさん残されている海岸である。

 この浅瀬と急に深くなる弾劾絶壁の境界には、たくさんの魚がいる。小さいものから30センチメートル、さらに大きい1メートルくらいもあると思われ魚がいる。赤や黒や金色のものまでカラフルで実に美しい。シュノーケルを使ってサメに気を付けながら、魚の群れの乱舞も楽しめ、飽きない。
 滞在した寮に誰かが残した水中銃があった。ある時、水中銃を持ち出して試してみた。最初は、慣れないためにうまくあたらない。たくさんいる魚も、銃で打とうと追いかけると逃げていってしまう。追いかけると魚たちにもわかるらしい。追いかけてはいけないのだ。シュノーケルを付け、しばらく海面に浮いてじっとしている。大木か大きな魚の気持ちになる。
 しばらく浮いていると名の知らないたくさんの魚たちが仲間と思うのか警戒せずに近寄ってくる。構えている銃のモリのすぐ先までくる。20センチメートルほどの大きさの魚が水中銃のモリの先に来た。モリの先端を通り過ぎる瞬間に発射!命中!こんな風に簡単にしとめることができる。何匹も取れる。小さすぎるのは、モリの勢いで吹っ飛んでしまうくらいに痛んででしまう。簡単すぎて、あまりに残酷である。魚を騙して捕るのはやはり気が引ける。

 スポーツは少し難しいくらいでないとつまらない。あまり見つけることのできない魚を見つけたり、難しい技術を練習して腕を上げることに、喜びや楽しみが生まれてくる。スポーツも仕事も簡単すぎてはいけないようだ。そんなわけで、水中銃を使用するのは結局1日でやめてしまった。水中銃の前の持ち主も、同じような気持ちになってやめてしまったのであろう。

 砂浜で、子供と遊んだことを思い出しながら、砂を掘っていたら黒いビンが現れた。更に掘るとまた出てくる。ウイスキーの空びんである。サウジアラビアは、酒は禁止されている。それなのに空のビンだがたくさん出てくる。誰が埋めたのだろう。密かに入手し、密かに楽しんで飲んだ後、捨てる場所に困ってここに埋めたらしい。禁止されているはずのアルコールもあるところにはあるようだ。砂の上に出しておくと、こちらがウイスキーのビンを埋めたものと疑われかねない。誰にも見られないうちに急いで埋め戻して、急いでその場所から離れた。


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