新連載
 その50    アラブの習慣と文化
    8 ガソリンより高価なミネラルウオーター


水をたっぷり使える日本人の生活は贅沢だ

 日本には、"湯水のように使う"ということばがあります。最近は、渇水期に水不足が新聞をはじめマスコミをにぎわすことがありますが、"水と空気は、ただ"と思っている日本人も多い。快適な生活をするために水の供給は欠かせません。我々は、水道の蛇口をひねればふんだんに水が使えるが、砂漠の中近東では、水は貴重品です。海水を真水に変えるために、淡水化プラントを建設し、たいへんなコストをかけています。洗濯するために新しい水を流しっぱなしにするなどは、まず、考えられません。炊事用の水もいかに少ない量を有効に使い、無駄を少なくするかの工夫をしています。砂漠の真ん中では、水がないので代りに砂を使うと言われるほどです。

 今では日本でもミネラルウオーターが一般的になりましたが、サウジアラビアで生活していた時は、飲料水は、ミネラルウオーターを購入していました。これらの水はすべてギリシャなどからの輸入品です。だから水の値段より、ガソリンの値段の方が安くなっていました。米をとぐにも、味噌汁用にもすべて飲料用はミネラルウオーターです。たいていの日本人の家では、ミネラルウオーターの入った段ボールをたくさん購入し、水には困らないように備えていました。
 自然環境の厳しいサウジアラビアにおいては、日ごろから栄養補給と十分な休養による体力の維持に努めるとともに、水分の摂取を怠らないよう留意する必要があります。自宅では、ミネラル・ウォーターですが、会社では通常の水道水です。飲用等に利用する場合には、十分に沸かします。ガフアというアラビアコーヒーと紅茶がありますが、たいていの日本人は、紅茶を好んで飲んでいました。砂糖をたっぷり入れたねっとりとした甘い紅茶ですが、喉が渇くために1日に何杯も飲んだものです。

 たいていの家の庭には、地下に水のタンクを備えられています。私の住んでいた家では、 縦2メートル、横 3メートルで深さが2メートルほどのコンクリート製の水のタンクがありました。公共的な水道水の配管はここに接続されています。しかし、水道局の貯水槽から遠く離れたところまでは十分に届いておりません。時々思い出したようにちょろちょろと供給される程度で、とても日常生活に足りる量ではありません。しかし、水なしでは生活できませんので、自分で市販の水を購入しなければなりません。町外れには、水を供給するタンク車が並んで待っています。この中から、値段の安いタンク車と交渉して水槽へ入れてもらいます。我々日本人が自分で購入しようとすると、高い値段を要求されますので、私はスーダン人に購入を依頼していました。

 いつもタンクの中を覗いて水の量を確認しておかないと、帰宅してもシャワーを浴びられなくなり、洗濯にも困ります。シャワーや洗濯用の水は、庭にある水槽の水をモーターで屋上の小さなタンクに吸い上げ、それを通常の水道の蛇口から出して使用します。
 屋上のタンクは、直径1メートル、深さが1.5メートル位の鉄製でした。屋上のタンクの量が少なくなると自動的に吸い上げるようになっています。昼間の気温は摂氏40度を超えるので、屋上の水タンクは直射日光を十分に浴びてあたたためられ、シャワーに丁度良い加減のお湯が出てきます。 
 ある時、シャワーを浴びていて、水が塩辛いのに気が付きました。サウジアラビアの水は、海水浄化装置で作られた水ですから塩辛い筈はありません。水の販売業者が原価を安く上げるために、浄化された水に途中で海水を混ぜたに違いありません。水の購入を頼んだスーダン人の使用人に、この塩辛い水をなめさせ、購入する前に確認するように頼んだこともありました。また、ある時は、水の出方が悪くなったので、屋上の水槽を覗いてみたら、ヤモリが死んで沈んでいたことがありました。

 こんな生活でしたから、日本へ帰っても水の無駄づかいはできません。私の自宅では、雨樋を途中で切断し、大きい40リットルのバケツをいくつも準備し、雨水を受けて溜めています。植木や庭への散水は、できるだけこの水を使っています。夏の暑い時期や冬の渇水期は、雨水だけでは足りませんが結構役に立ちます。夏の暑い日には、上水道の水さえ庭に撒いたり、たっぷりのお湯で肩まで浸かったお風呂など、我々は、アラビア人の何倍もの水を使っています。このように水を豊富に使える日本人は、実に幸せで贅沢な生活をしているということができます。


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