新連載
 その45     アラブの習慣と文化
     3 出国するのにもビザ(査証)が必要


                   急病になってもすぐに出国できない不安

イスラム教の聖地であるメッカ、メディナのあるサウジアラビアは、一般犯罪は少なく、治安は比較的安定している国です。比較的軽い犯罪に対しての公衆の面前での鞭打ちの刑は良く知られています。殺人等の凶悪犯には、斬首刑等の厳罰で臨んでいるため、他の先進諸国と比較して犯罪の発生率は低いように思われます。「ムタワ」とよばれる宗教警察があり、日常、外国人も色々な規制を強いられます。宗教によって制限されることの少ない日本人とっては不思議に思われることが多いのです。

  まず、出入国が大変厳しく制限されていることである。サウジアラビアに入国するためには、査証を取得することが必要です。入国ビザについては、日本でも外国人に対して要求しており、多くの国々で実施しておりますが、サウジアラビアの場合は、短期間商用ビザ、巡礼ビザなどがあります。しかし、他の国で一般に認められるような、観光ビザはありません。

ビジネスで入国する場合には、サウジアラビア国内に関連する企業など身元保証人をたて、サウジアラビア大使館に必要書類を整え申請します。それと同時に、サウジアラビア国内の身元保証人が内務省に査証を申請し、その許可がその国(例えば日本)のサウジアラビア大使館に連絡されてから査証が発給されます。
  従った、ビジネスで訪問する相手が予め明確でないと入国できません。まず入国し、それから街の中を歩き回り、調査をして交渉の相手を探すことは難しくなっています。(イスラム教徒になれば別です)。出国する際は、短期のビザの場合は、なんら問題はありません。

現地で長期間仕事をするために滞在するには、「エカマ」という就労ビザが必要になります。現地に駐在する人たちは、このエカマを通常携帯していなければなりません。エカマを持っていれば、サウジアラビア国内を移動旅行するに困ることはありません。ただし、就労する人のパスポートは、身元保証人が預かることになっています。
 問題は、この就労ビザ(エカマ)を取得している人が、サウジアラビアを出国する場合です。サウジアラビア内務省管轄の旅券事務所からの出国査証の取得が必要になります。この査証を取得していないと出国できません。
出国ビザの取得にもそのタイミングによっては、数日かかることがあります。当時は、日本人の医者もおらず、病院も十分ではありませんでした。私も駐在している期間中は、重病になった場合や緊急事態が発生した場合、どうなるのだろうと心配したことがあります。幸い何もなくてすみましたが、慣れないとたいへん不安になります。
 欧米諸国は勿論のこと、東南アジアの入国の厳しい国でも、出国は比較的自由な国が多いのです。(勿論、犯罪者については、出国の際チェックされることになっていますが)。しかし、サウジアラビアに到着してしばらくの間、この出国ビザについて知らされていなかったので、最初は不安で戸惑ったものです。この出国ビザで、犯罪で手配されているものは、無断で逃げ出すことはできないシステムになっているのです。

急に出国する必要が発生した場合に、パスポートがなく出国できないという事態にならないよう、出国ビザに必要なものを準備しておくとともに、パスポートをすぐに受け取れるように身元保証人との緊密な連絡体制をとっておく必要があります。
 駐在する場合には、常時勤務する会社の金庫に保管してもらうのが良いようです。また、サウジアラビアで就労ビザであるエカマを取っている人が、出国の際は、再入国があるのが普通です。手続きの際、再入国許可を取得する必要があります。うっかりしてこの手続きを忘れると再入国できなくなります。出国に際しては十分注意する必要があります。この辺の手続きは、実状を良く知っている現地人へお願いするのがベストのようです。

注意:中近東での習慣や文化、ビザの取得など同じイスラム教の国でも、国により大きな違いがあります。また、制度の変更もあります。その国の最も新しい規則に従がう ことです。


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