新連載
 その43     アラブの習慣と文化
        1 ベールに包まれたアラブ女性
 


             アバヤの下の華やかな服装にあらわれる女性の心理

 アラブの世界では、イスラムの教義がすべての基準である。彼らの生活の中での法律と同じで非常に厳しく守られています。すべてがコーランに示されたとおりに行われるのです。サウジアラビアがもっとも厳しく、クエート、イラン、イラクなどでも、この教義が守られています。インドネシアやエジプトもイスラムの世界ですが、他の宗教の人たちがいるためか厳しさは、先の国々ほどではないようです。

 イスラムの教義が、アラブ諸国の風俗や習慣に大きな影響を及ぼしています。まず、女性の行動がたいへん制約されます。もっとも厳しいサウジアラビアでは、通常女性は単独外出はあまりしません。アラブの世界でも比較的、開放的なクエートなどでは、女性の車の運転は可能ですが、サウジアラビアでは禁止されています。
 従って、外出する場合は、親や兄弟、夫やその家の使用人が運転する自動車に頼ることになります。女子の中学生、高校生、大学生いずれも、通学は父親か、兄弟に車で送ってもらいます。登校時間にはバラツキがあり、到着すればすぐに乗用車も帰ってしまうので集中しませんが、退校時間には女子中学や女子高校の校門の近くには、迎えの乗用車でいっぱいになります。女性は他の家の男性に顔を見せない習慣を守るために、親か兄弟、または、使用人に迎えにきてもらうのです。

 外出に際しては、女性は頭から足まで「アバヤ」という黒いベールで包みます。厳しいサウジアラビアでは、両目の部分のみ開いた黒いベールをかぶった姿になります。暑い真夏でも変わりませんから、町の中ではベールの下に汗が光って見えることがあるくらいです。慣れているようですが、彼女たちも、この暑さに絶えるのはたいへんなようです。
 外国人もこれに準じることが求められます。海外から仕事で赴任している人の家族でも女性は、アバヤまでは要求されませんが、ノースリーブ姿は許されません。気持ちとして、姿をアバヤで覆ったつもりになることが要求されるのです.男性については、子供以外は大変暑い中でも、半ズボンの着用も許されません。女性のアバヤ同様、注意する必要があります。ムタワと言われる宗教警察が町の中でも見回っていて、これに反すると注意を受けることになります。

 どこの世界でも女性のおしゃれをしたい気持ちには変わりがないようです。彼女たちの外出時の服装は制限されますが、黒いベールの下の服装は、赤や緑、黄色と原色を使用した、たいへん華やかなものになります。たとえば、町の中のショウルームなどで時折、ベールの下に着ている服装を垣間見るときがあります。彼女たちは、大変上品で華やかなものを着ています。電気製品の工事やサービスメンテナンスで長時間アラブ人の家を訪問した時も、華やかな服装をした女性を見掛けました。しかし、彼女たちは、我々に顔を見せることは決してありませんでしたが

 アラブ人の家を訪問しても、女性は客の前には出てきません。すべて男性が応対します。食事などに招待されることがありますが、奥さんは絶対に顔を見せません。食事の給仕なども、本人か、使用人、又は、雇われた料理人がしてくれます。

 公共の場所においては、親や兄弟、親戚以外、不特定の男女の同席は禁じられています。そのため、プール、テニスコート等でも男女は同席できません。家族であっても同様です。結婚披露パーティも、男性(花婿)と女性(花嫁)は別々におこなわれます。花嫁の披露宴には、女性しか出席できず、花婿の披露宴でも同じように女性は出席しません。
 勿論、アルコール類は、禁止ですから、酒とかビールでにぎやかに騒ぐことは、どちらの側の披露宴でもありません。お茶(紅茶)やジュースを飲みながら食事をしてお祝いします。もともとアルコールが禁じられている世界ですから、お茶やジュースでもそれなりに盛り上がり、踊りを踊って賑やかに祝います。
 公園や遊園地で遊ぶのも男性と女性は別々です。遊園地では、入場できる曜日や時間で男性と女性では区別しているところもあります。レストラン等では女性がいる家族の場合には、一般席から見えにくい家族席に案内されることになります。

 アラビア人の場合には、海に入る場合でも、派手な水着は着ませんし、ビキニなどはとんでもないことです。海水浴でも、彼女達は黒い布を着用して海に入ります。だから遠くからでも、アラビア人であるか、日本人や殴米人かすぐにわかります。砂漠に囲まれた生活の中で、休日に、我々日本人はストレス解消によく海水浴に出かけました。我々の車が海辺に近づくと、先にきていたアラビア人の家族は、入っていた海から急いで上がって、乗用車の近くにはってあるテントシートのかげに身を隠してしまいます。欧米人の場合は気を使わなくてすみますが、アラビア人の場合にはあまり近づいて、彼女たちを困らせないように配慮しなければなりません。

 このような習慣は、サウジアラビアが最も厳しく、クエート、イランやイラク、インドネシア、エジプトと、少しづつゆるやかになるようです。しかし、アラブの世界では基本的に変わらないと思って行動するのが適切な対応の仕方です。


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