新連載
 その38 フィリッピンはまだ危険がいっぱい   

                  5つの安全心得を忘れずに
今月5日(2000年12月)、フィリッピンのパンパンガ州で、日本人が誘拐され、25時間後に無事解放されたとのニュースが伝えられた。つい先日も、「日本からの現地企業への出張者がマニラ空港到着後に行方不明となり遺体で発見された。」というニュースが伝えられたばかりである。だいぶ安全になったと言われるフィリピンであるが、このような事故を聞くたびに、まだまだ大変な国だと思う。

  10年程前までのマニラは、空港やその周辺で見られる環境条件は他の東南アジアの国々と比較すると落差が大きく、出張、訪問するのも、気が進まない国であった。特に、空港で通関したあとの出迎えのための出口の混雑がひどかった。出迎えの人々が鉄柵に鈴なりになっていて、手を振っている。海外から帰国した知人、友人、親戚の出迎えということであったが、その多くの人たちのために私を出迎えてくれる人がなかなか見つからない。出迎えてくれた相手を見つけて、その人に近づこうと鉄柵の外に出ると旅行かばんをとられそうになる。かばんを運んでチップを貰おうとする人達が何人も近寄ってきて奪いあうのである。これを知らずチップをやればよいと考えていた友人の中に、そのまま荷物を盗られてしまったものがいた。出迎えを装ってその群集に紛れ込んで悪事を働く者が多くいたのである。出張するたびに、日本を出発する前の電話で、決して他人へ荷物を渡してはならないと何度も念を押されたものだった。

もう日本人の記憶から消えかかっているが、1986年11月には、三井物産マニラ支店長がゴルフの帰りに誘拐され身の代金を要求された事件も起っている。解放されるまでの過程で、手の指を切断された写真なども新聞で生々しく紹介され、フィリッピンは大変危険な国という印象が強烈であった。幸い、その人は、手の指も何ともなく、無事解放されて解決したが、多額の身の代金を支払ったという噂を残した。(身の代金は、300万ドルともいわれている)指のない写真は、身の代金を取るための脅しであったようである。その後も、フィリッピンでは、日系企業責任者クラスの人が誘拐される事件が何度か発生している。
10年ほど前までの、空港をはじめとして、当時の市内の様子には、このような事件が起るのは仕方がないと思わせるような殺伐さを感ずる雰囲気がであった。その後、空港の駐車場も大きくなり、出迎えの通路も改善され、広くなると共に、検察官の数も増やされ、出迎え口の群集を整理するようになった。関係者以外は、近寄りにくく管理がされるように改善された。
さらに、マニラでAPEC会議が開催されてから、空港から市内までの道路も整備されて、見違えるほどに美しくなった。マニラ市内は、工事が行われ、ゆくたびに環境的な落差も大きく改善されている。最近では、きっちり連絡さえ取っておけばまず安心して出張できるまでになり、危険を感ずることはなくなったように思えた。

南国の明るい風土の中で育ったフィリッピン人は、工場の中で知り合ったり、日本へ研修にきた人たちを知る限りにおいては、はにかみやと人懐っこさが共存している。スペイン系とタガログ系の顔が混じっており、みんな器用であり、真面目である。サイエンスパークなどの工業団地には、たくさんの日系企業が進出し、これらの企業での生産活動を通してフィリッピンの経済発展に大きく貢献する原動力になっている。
  はにかみやで真面目な人しか知らない私には、このような悪事と誘拐などは全く信じられないことである。しかし、マニラ市内のメインストリートの美化や発展とは別に、裏通りや都市から離れたところには、貧しい生活に苦しんでいる人たちがたくさんいる。時折、新聞でも紹介されるように廃棄されたゴミの山の中から、少しでもお金になりそうな者を探し漁る子供達の姿があり、日本人の良く使用するレストランの前には花束売りをして生計の足しにする子供達がいる。このような子供達の記事や誘拐事件の報道に接するたびに、フィリッピンは、まだまだ危険がいっぱいと思わざるをえない。

フィリッピンに限らず海外旅行をする際に、私が注意していることを記しておく。これを実施したから、事故に全く遭わないということもできないが、その頻度は少なくできる筈である。被害に遭うと出張者は、仕事にならなくなり、旅行者は、たいへん不愉快な思いをし、楽しい筈の旅行が台無しになってしまう。勿論、危険な国ばかりではない。これから、年末年始にかけて海外旅行をする人が多くなる。訪問する国の状況を良く知り、注意をすることにより、楽しい旅行をしたいものである。

安全な海外旅行のために注意したいこと

1 出迎えてもらうこと。

最も安全な方法は、知人に出迎えてもらうことである。企業から派遣され、現地に駐在している人は、たいていマニラの状況を良く知っている運転手を雇い、生活している。運転手が危険な場所や危険にあった場合の対応方法を良く知っている。到着してから通関して出てくる時間も熟知している。フライトの到着時間を確認して対応してくれる。そのためには、フライトの運行時間も正確な航空会社を選ぶことも大切なことである。

2 夜間に到着する便は使わないこと

到着が遅れると迎えの人も含めて困るし、その人も危険にさらされる機械が増える。出迎える人とは事前に待ち合わせ場所を打ち合わせて決めておくことである。全く面会したことのない場合は、写真などを最悪FAX等で送付し、相手の写真も入手し大体検討を付けられるようにしたい。

3 迎えのない場合は、空港タクシーやホテルタクシーを利用する

空港には、しかるべき安全なタクシー会社がカウンターを持っている。そのタクシー会社を使う。少し料金は高いが安全である。空港の到着ロビーで近づいてくる人は、怪しいと考えて間違いない。白タクなどで、最初は安い料金でゆけるように思わせて不当な料金を吹っかけるケースが多い。相手が一人と安心してはいけない。途中で別の者が乗り込んでくる場合もある。その上、タクシーの運転手も含めて被害に遭ったように装う場合もある。日本も白タクには注意してするのと同じである。

4 知らない人に気をつける

個人の名前を呼んで近づいてくる場合もある。旅行かばんやアタッシュケースに大きく名前を表示している人がいる。これが危険である。そのかばんの名前を見て呼びかけてくることもある。かばんやアタッシュケースには、決して名前を表示しないことである。

5 かばんなど荷物は最後まで自分で管理する

迎えがあったからといって、安心してはいけない。かばんは、最後まで自分で見届けることが大切である。できれば、自分で車に積み込むか、積み込まれたことを確認した上で車に乗ることである。タクシーなどでは、かばんなどを近くの別の車に積まれることもあり得ないことではない。


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