新連載
 その34  罰金制度で保たれている環境美化   

            シンガポールではチューインガムを持つことも禁止

横浜市には、「空缶等及び吸い殻等散乱防止に関する条例」と言うのがある。その第8条に「何人も空缶等及び吸い殻等をみだりに捨ててはならない。」とうたわれており、更に第28条には、「第8条に違反したものは、20000円以下の罰金に処する。」と罰則規定も定められている。
先日、横浜市の環境保全を担当する美化担当に罰金について問い合わせてみた。しかし、この条例が適用され罰金を支払った者はいないとのことであった。この条例の罰則規定は、「そのくらい気を付けて欲しい。」という気持ちを込めて制定したというのが担当の方のコメントであった。
日本のこれらの規定に関する罰則は適用に厳しさがない。駅のホームや線路上には数えきれないほどの吸い殻がいつも見られる。それどころか、家庭で出たゴミ、それも生ゴミと思われるものさえ、公園のごみ捨て用の籠や駅のごみ箱に捨てる者さえいるという。

 シンガポールでは、たばこの吸い殻だけでなく、ゴミを捨てると高額の罰金が取られる。この罰金の制度でシンガポールの美しさが保たれている。ちなみに、ぽい捨てに対する罰金は、1000シンガポールドル(¥63000)である。このぽい捨ても再犯になると2000シンガポールドル(¥126000)にアップする。
 また、水洗トイレを使用して、使用後に水を流さないと150シンガポールドル(¥9500)の罰金がとられる。使用後に水を流さない者をどのようにして発見し、捕まえ、罰金を科するのかは知らない。

 日本人観光客にも、旅行でシンガポールを訪問し、いつもの癖でたばこの吸い殻をぽい捨てし、罰金をとられてしまった人がいる。旅行の案内書にも記されているのであるが、ついうっかりしてぽい捨てしてしまうのである。私の友人も、ついいつもの癖で歩きながらたばこを咥えていて、シンガポールにいることをハタと思い出し、慌ててしまう日本人を何度か目にしたという。事務所の中は全て禁煙である。時々、シンガポールの友人に電話をする。事務所にいないとの秘書の返事に「たばこを吸うために不在か。」と聞いてみると、「イエス」と笑いながら答える。

 チューインガムに関してはさらに厳しい。所持すること、販売することそして、輸入することすべて禁止である。以前は、自宅で噛むために持つことは問題にならなかったが今は持つことも禁止である。日本の駅の構内や歩道で靴の底についたガムで不愉快な思いをした人は多い。シンガポールではこのようなことはない。

 タイでも最近は、厳しくなってきた。たばこの吸い殻をぽいと捨てて捕まると80バーツ(¥210)の罰金である。罰金を払うのがいやで言い訳をしていて警察官とトラブルになるとどんどん罰金が大きくなる。友人に1000バーツ(¥2600)取られたものもいる。もっと取られた日本人もいるらしい。警官はポイ捨てを見つけた者と山分けをするという噂もある。
  この種のトラブルに巻き込まれると外国人は不利である。法律があるのであるから、素直に支払って少ない金額で済ませた方が無難である。勿論、捨てなければ何の問題もない。悪い習慣は、直しておいた方が良い。

 海外へ進出した日系企業は、「5S」と称して、工場の整理整頓の教育をしている。日本人は工場の中では指導をしている、街の中ではつい「ぽい捨て」をして罰金を取られている。全く情けない限りである。先進国を自任する日本。横浜市でも、この条例を厳しく適用しどんどん罰金を取ればよい。そして、このような条例を全国に広げて取り締まって欲しいものである。


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