新連載
 その29 メイドやガードを雇うのが常識の国


               それなりの理由があり、助けられることが多い
 東南アジアに赴任し仕事をするには、たいていはメイドやガードを雇うことになる。赴任する国や都市にもよるが、庭番(ガード)、料理人や洗濯その他、それに車の運転手と3人を雇う必要のある場合もある。失業者を少なくするために、外国人やお金持ちには、メイドや庭番を雇うように指導しているところもある。
 大手企業のトップマネジメントレベルの人はともかく、あるいは戦前ならいざ知らず、現在の日本の習慣からすると、自分の家のためにメイドやガードを雇うことについては少々抵抗がある。しかし、単身赴任や独身者の場合はもちろんのこと、家族を伴って赴任する場合も、その国の習慣に合わせて雇った方が良い。運転手については、VIPでなくても雇って運転してもらう方が何かと都合が良い。運転のマナーや交通状態の違いから、トラブルに巻き込まれるのを避けるために、自分で運転することを禁止している企業もある。

 慣れない国に赴任し、最初に、住宅などの賃貸借契約時にいろいろ説明を聞かされる。しかし、すべて理解し、対応するためには大変な労力が必要であり、そもそも最初からうまく対応することには無理がある。
  第一説明を日本の習慣に照らし合わせて聞いてしまうことに原因がある。その都市で生活を始めて、間もなくトラブルに遭遇することになる。その都市の習慣などが日本とは違うために戸惑うことが多い。トラブルは、たいてい夜遅くとか休日など、解決するのに都合の悪いときに発生する。
例えば、新しくアパート(マンション)に住み込んで、しばらくして、ある日夜遅く帰宅し、電気が来ていないことに気が付く。単身赴任で、夜遅く帰宅して電気がつかなくて困ったなどという経験した人は多いはずだ。はじめてのケースでどこへ交渉してよいか分からない。夜遅いためになかなか連絡もつかない。途方にくれることになる。クーラーも電気冷蔵庫も使えない。部屋の中には熱気がこもり、暑くてたまったものではない。冷蔵庫の貯蔵品もいたみはじめる。

 こんな時、メイドを雇っていれば、昼に電気が止めらても原因を確かめ、たいてい連絡を取り、解決しておいてくれる。ガスや水道の故障など別のトラブルが発生しても、隣人のメイド同志で連絡を取り、解決してくれて問題はない。
 前の居住者が電気代やガス、水道代金を滞納した上、これを支払わずに転居したために、未払いで電気が止められるた例もある。これはオーナーの問題であるが、このようなとばっちりを受けることも希ではない。そのアパートに同じ会社の人でも住んでいればすぐに相談し解決できるが、隣人との会話もなく、メイドもまだ雇っていないうちに発生するからやっかいである。

  家族連れでもガードやメイドに助けられることは多い。インフラのトラブルの例だけでなく、日常的に発生する買い物や各種の支払いなどをする場合も、すべて彼女たちに頼めば解決してくれる。野菜など毎日の買い物でも、自分でゆくと法外な値段を要求されることもあるが、メイドを同行し、購入すれば適正な価格で購入できる。買い物の際、家族の嗜好や要求を覚えてもらえばそのあとは任せられるようになる。
 勿論こちらの納得のいくまでになってもらうには時間が掛かるが、気持ちが伝われば工夫もしてくれる。現地で快適な生活をするためには気心に知れたメイドを雇うことができるかで決まると言った人もいるほどである。

  ガードを雇うことが普通となっている国で、ガードを雇わなかったりすると泥棒に入られる機会が多くなる。雇い入れたとたんに泥棒の被害はぴたりとなくなる。泥棒に入られないようにガードを雇ったのであるから、当然といえば当然の話であるが、経験者によれば、そのタイミングなどを考えると仲間同志でグルになっているとしか考えられないという人もいる。どこまでが真実か分からないが、雇わないとそれ以上のトラブルに巻き込まれる機会が多くなるのは確かなようである。信じられないようなことであるがその国の習慣に従って対応すことが賢明のようである。


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