新連載
  
その5   日本版6シグマとTQCの違い  


 「日本版6シグマ」をある程度実践してきても、従来のTQCと混同され、同じものと誤解されることが多い。またその違いを説明する段階になるとさらに混乱がおきやすい。「日本版6シグマ」とTQC(総合的品質管理)やCWQC(全社的品質管理)は、基本概念やその丁寧さやシビアさにおいても大きく異なる。ここでもう一度、「日本版6シグマ」を整理しておきたい。

「W型問題解決手法を使って
超シビアに問題を解決する具体的実践法」

 データをグルーピングし、表札をつくり、図解化し、実行計画を作成するという一連の経験をしたことのある人にとっては、次のように表現したほうがわかりやすいかもしれない。日本版6シグマとは、過去の経験を生かし、広い視野で問題を検討し、最初から問題を起こさない仕事の仕方をシビアに追及し、計画に織り込み、最初からきっちりとした仕事のやり方をする実践的手法である。
 もっと大きな視点で言えば、課題について、事業トータルの視野から大きく解決のストーリーをデザインし、ダイナミックに攻める。その上で必要なところを個別に詳細に決めてゆく手法である。大きく、しかし、厳しく論理性を重視し、丁寧に計画に織り込み、決めた以上はその通りに実践するという厳しさが特徴である。

 W型問題解決法の中の「People Out」プログラムは、M5型組織を追及する意識改革プログラムである。企業家マインド持った人材を育成し、全体最適を目指す行動をめざす。「Work Out」プログラムは、COPQ(品質不良で発生する無駄なコスト)を最小限"0"に抑えるための業務遂行プロセス改革プログラムである。VOC(お客様の声)とCTQ(品質不良を発生させる内部的要因)を把握し、そのMUST課題とWANT課題を明確にし、解決すべ課題(SSP)を論理的にシャープにをコンセプト化し、実行手順書を通して適材適所の実行体制作り上げる。

 ここでいわれるMUST課題とは、どうしても解決しておかなければならない課題であり、WANT課題は、できれば解決しておきたい課題のことである。これは製品に例えれば、MUST課題はどのメーカーでも解決して採用するため、MUST課題で差がつくことは少ない。製品で他社に差をつけるためにはWANT課題を適切に選択し、安く実現することをしなければならない。

「日本版6シグマ」は、全体最適をめざす。
 
「日本版6シグマ」では、最初から不良を出さない、問題を起こさない仕事の仕方をシビアに追及する。W型問題解決フローの各段階において、時にはラフに検討し、過去の経験をすべて生かすために360度の広い視野から具体的な手がかりとなるものを集め、それらをグルーピング化し、図解化する。次の段階では、具体策をSeriousness(S)、Urgent(U)、Growth(G)の視点からシビアに評価をして、絞り込んでゆく。最終的にはこれらを総合した計画案をチャンピオンが大所高所より評価し、判断し採用するかどうかを決済する。部分的に良さそうに見える案でも、全体として不適切であれば、この段階で排除される。チャンピオン(経営トップ)が、最終的に全体最適かどうかを判断することで部分最適は許さないシステムになっている。
 大切なことは、全体の計画は、必要とする費用や達成するまでの期間も含めてトップが経営判断をし、決済することである。もし、経営トップが最終計画案について自分で問題点を理解し、要する費用や時間的なファクターも含めて判断しなければ「日本版6シグマ」とは言わない。この点では、「日本版6シグマ」は担当者から経営トップまで厳しさが要求される。
 経営トップが「よきにはからえ」という考えでは「日本版6シグマ」と言わない。GE版6シグマは、「トップダウンである」と説明される。しかし、トップダウンの6シグマは日本になじまない。経営に参加したい人たちが多い日本では、上から指示されるのを好まない日本的風土もある。この特殊な日本的風土にマッチするようにしたのが「日本版6シグマ」である。全員がそれぞれの立場で問題を起こさないためのアイディアを出し、全体の計画に織り込む。この全体の計画をトップが経営の立場から検討して、判断し、決済することが「日本版6シグマ」では重要である。6シグマという言葉を使用していても、経営トップが最終決済を行わなければ、それは「日本版6シグマ」とは言わない。

TQCは部分最適である。
 従来のQCサークル活動をもう一度、思い起こして見る。QCサークル活動で取り上げるテーマは、グループリーダーが中心となって、グループ内で決めることができる。上司はそのテーマが大きく所属する部や課の方針から外れていなければ却下することはない。上司もその上の上司も一生懸命やっていれば「それでよし」としてきた。問題の対応策が自部門だけでなく、他の部門と関係のあることについては、調整機能は持つけれども、大きくトータルとして判断することは少ない。グループリーダーと関連部門の担当者、または、上司同士の力関係で採用されるかどうかも決められる。時には、声の大きい方の意見が通ることもある。全体最適よりも部分最適で物事が決定されがちである。上司や経営トップも、特別大きな費用をかけずに、元気にQCサークル活動を行い、外部で発表していれば安心してフシもある。TQCは、トップも深くかかわりあわない部分最適の活動である。

TQCに慣れた人ほど誤解しやすい。
 GE版6シグマでは、全体の説明をする際に、MAICというPDCAに似たサイクルを説明する。このサイクルで使用するいろいろな手法には、TQCで使用する統計的手法もある。このためにTQCを詳しく勉強し、従来実績を上げた経験のある人ほど「俺は知っている」という錯覚に陥りやすい。日本版6シグマでは、「QCの七つ道具」も重要なツールであると説明する。すると最後まで十分に説明を聞かずに「TQCと変わらない」と言う印象を受け、結論をだしてしまいがちである。これが、6シグマはTQCと同じであるという誤解の元になっている。これまで見てきたように、TQCと「日本版6シグマ」は基本的に違うものである。


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