[日本版6シグマ」の両輪
「People Out」と「Work Out

 「日本版6シグマ」と従来の「TQC:総合的品質管理)」は混同され、同じものと誤解されることが多い。その違いを説明するとなるとさらに混乱がおきやすい。「日本版6シグマ」と「TQC」は、基本概念やその丁寧さやシビアさにおいても大きく異なる。ここでもう一度、「日本版6シグマ」を整理しておきたい。
 「日本版6シグマ」は、経営と現場が一体となった「People Out」と「Work Outを両輪とする「BSTプログラム」を武器とする組織的な問題解決活動である。「何が問題なのか、どう解決するか」について、問題意識を共有し、現状の問題点「VOC、CTQ」を本質的に把握し、全体的な「6シグマ課題」を設定する。その解決にあたっては、各業務分野別に「6シグマ課題」を分担し、実行体制をつくる。 
 「People Out」は、6シグマ活動に向け、組織全体の意識を改革するプログラムである。6シグマをリードできる人材を育成し、問題解決力のある組織をつくるためのをプログラムである。
 「Work Out」は、「COPQ(品質不良で発生する無駄なコスト)」を最小限に抑えるための業務遂行プロセス改革プログラムである。「VOC(お客様の声)」と「CTQ(品質不良を発生させる内部的要因)」の本質を把握し、解決すべき「6シグマ課題(SSP)」の全体を設定し、実行手順書を通して適材適所の実行体制を作り上げるプログラムである。 


「日本版6シグマ」は、
全体最適をめざす。
 
「日本版6シグマ」では、「Work Out」プログラムで、「VOC(お客様の声)」の本質を把握し、「CTQ(品質不良につながる内部的要因)」を絞り込み、解決すべき「6シグマ課題(SSP)」の全体を設定し、実行手順書を通して適材適所の実行体制作り上げる。
 ここでは、「CTQ」解決のための具体的なアプローチ策を広く収集し、「データ化→グルーピング→表札」というKJ法的な情報処理を通して、「6シグマ課題」をコンセプト化し、その全体を図解化する作業が中心になる。次は、各業務部門別に分担する「6シグマ課題」について、具体的なアプローチ策を無理なく実行できるよう手順化した「実行計画書」の作成である。
 
 ここで従来のQCサークル活動をもう一度、思い起こして見る。QCサークル活動で取り上げるテーマは、リーダーが中心となって、グループ内で決めることができる。上司はそのテーマが大きく所属する部や課の方針から外れていなければ却下することはない。上司もその上の上司も一生懸命やっていれば「それでよし」としてきた。
 経営トップも、現場が特別な費用もかけずに、元気にQCサークル活動を行い、外部で発表し、自信を持ってくれれば安心というフシもある。TQCは、トップがあまり深くかかわりあわない部分最適の活動である。
 
 「日本版6シグマ」の提唱の契機となった「GE版6シグマ」は、ジャック・ウエルのトップダウンが基本になっている。しかし、上からの一方的な指示・命令によってではなく、現場の自発的なボトムアップ力向上に向け、教育プログラムや評価システムの充実に大きな経営資源を注力している。
 
 「日本版6シグマ」も、日本の企業風土に根付いている現場の自発的なボトムアップ力を大前提としている。ここには、これまでのような経営トップの「よきにはからえ」はない。経営方針としての「6シグマ」が経営にとって全体最適かどうか、経営トップが自らの責任で、「6シグマ課題」の妥当性やその解決の見通しも踏まえ、「実行計画」そのものを以て、自らの「6シグマ方針」を決済する。このことによって、経営トップのリーダーシップと現場のボトムアップ力が一体となった「日本版6シグマ」がはじめて実体のあるものになるのである。


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