品質は
90%設計で決まる  

 「COPQ(不良発生によるコスト)」は、製品の品質不良に限定して考えると開発設計段階に起因していることが多い。
 昔は、品質の70%は設計で決まると言われていた。しかし、製造工程の機械化や自動化の進み、生産ラインでの製造ミスは格段に減少している。現在では、品質の90%いやそれ以上の比率で設計段階で決まってしまうレベルになっている。
 誠品の品質問題に重大な影響を及ぼしている「内部要因:CTQ(Critical To Quarity」のほとんどが、設計者及びその管理者が十分配慮することで排除することが可能な比率が高くなっている。
 
 設計部門は、調達すべき原材料や製造に関する情報を選択、決定し、提供する重要な機能を持っている。
 新製品の開発段階で、設計部門の能力不足や検討不十分、手抜き等のために、完成度の低い製品が製造工程に引き継がれれば、製造工程が混乱し、予定外のコスト増につながる。
 さらに不良品が市場に出るようなことがあれば、顧客に後々まで大きな影響を及ぼし、それがメーカーの信頼を損ない、「COPQ」を一層大きくすることにつながる。


製品設計と工程設計
 設計者は広く情報収集を行い、手持ちの情報と組み合わせ、多くの設計案を考える。そして各案の結果の予測と評価を行い、最適案を選択し、図面、仕様書、部品表、工程表等の書類を作成する

 設計は、大きく分けて製品の機能や性能を設計する「製品設計」とその製品を製造する設備や工具、作業者や手順などを決定する「工程設計」に分類できる。設計者が選択する範囲は広く、大きい。責任も重い。
 部品についていえば、その性能や機能で材料や部品を選択するだけではない。品質に大きい影響を与える購入先の選択まで指定する。情報が少なかったり、情報の質が良くなければ、意思決定の質が悪くなる。

設計担当者の情報収集力
 現在は、部品に関する情報量が格段に豊富で良くなっている。原材料やコンポーネントメーカーの売り込みもはげしい。技術のレベル高くなったけれども関連する情報は努力をすれば手にできるようになってきている。問題は、設計者のセンスや技術の進歩に対する感度である。
 例をあげれば、電子機器組み立てに関する製品の場合、製品に使用される部材に関する情報は、詳細な仕様は勿論のこと、信頼性のデータ、及びメーカーのレベルさえもある程度時間をかければ入手できる。
 これらの情報を、新製品企画段階で入手し採用できることが望ましい。平常より、最先端の技術力を持つメーカーとコンタクトを持ち、次に採用できる技術を探り蓄積しておかねばならない。
 新製品に採用する部在のメーカーとして、どのメーカーが最も適切であるか。どの企業を選択するかで新製品の機能、性能、品質(平均値とバラツキ)、そして価格や信頼性が決まる。
 設計者は、新製品に押し寄せてくるノイズやストレスを想定して、実験、確認し、この外部のストレスにどのように対応するか、どの程度安全率を見るかなどを決定する。

製造工程
高能力機械設備に依存
 製造部門の品質に大きな影響を与える手作業の比率は非常に小さくなっている。小型化された高密度のLSIは、もはや人間の手で取り付けるには小さすぎる。作業はほとんどが自動機械に取って代わられ、機械設備の性能も格段に改良され、製造するスピードも速くなっている。。 
 電子機器に使用されているプリント基板も技術の進歩により、どんどん多層化されている。多層基盤の上に高密度のLSIが取り付けられ、構造が大変複雑になっている。その接続部分は、故障があっても検査員の目では直接確認できない。特殊なX線解析装置を使用して短時間に解析、分析が可能になっている。
 新製品開発の「製品設計」や「工程設計」は勿論自社で行うが、製造のための設備や機械は、最先端の技術力を持ったメーカーのものを採用する方針の企業が多い。系列破壊という言葉も聞かれるが、品質に真剣に取り組む企業では、当然のこととなっている。
 設計段階で求める「QCD」に対応できない取引先は、従来から良い関係にある場合でも、取引停止を打ち出せない親企業自身が、その存続さえ危うくなる時代である。
 
新製品の完成度、
設計者の問題意識と感度で決まる。
 
問題は、設計者が十分な学習意欲を持って、情報の収集と評価に取り組むかである。開発製品の品質目標について、どこまで課題を追求し、早く結論を出せるか、結局は、設計者の問題意識と感度で決まる。
 特に、品質目標と使用部品の選択には大きい関係がある。製品を電子機器に限定すれば、その対応ポイントは次のように整理される。
 ここでは、コンポーネント メーカーの営業だけでなく、自社のスペシャリストである資材購買担当者と平常よりコンタクトを持ち、使用部品の品質、信頼性に関する情報を収集し、短時間に実験確認する手際の良さが求められるのである。

■使用部品の品質目標
(1)平均値
(2)バラツキ
(3)信頼性:対環境、対ストレス(例:電源電
   圧、サージ電圧、雷)、機器の組み合わせ
   寿命(MTBFの計算)
■使用部品メーカーの決定
(1)信用度のあるメーカーの選択
(2)部品の品質・信頼性データの確認
(3)供給の安定性:品質・納期・価格

■資材部門や購買部門との連携
 特に、下記にあげた部品の技術的な進歩は実に早い。常に最先端の技術を採用した原材料、電子部品の製造会社の動向調査を行い、その企業の技術力、品質管理体制、価格対応力などの情報を入手すると共に、自社で使用できる関係を持っておくことができるかが課題となる。
 これには、資材部門や購買部門の担当者の協力が不可欠である。良きチームワークや人間関係を保っておく必要がある。
(1)多層プリント基盤
(2)IC/LSI
(3)小型チップ化部品

 次にあげた製造設備や検査、分析装置の分野でもその技術的な進歩は日進月歩である。常に最先端の技術に関しては、展示会などに足を運び、そのトレンドを読むと共に自分の設計商品に採用できるかどうか情報入手に心がけたいものである。
(1)自働装着機(リフロー半田付け設備)
(2)自働検査装置(X線検査装置、照合判別装
   置技)
(3)分析・解析装置(X線検査装置)
 


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