検査で
品質は良くならない

 QCサークル活動が華やかな頃、「いくら検査を徹底しても品質は良くならない」、良く言われた言葉である。
 いくら検査を何段階行っても、厳しくしても不良品をすべて取り除くことはできない。だから、最初からきっちりと不良が出ないような作業をしようという意味で使われた。 


 当時、製造工程では、部品の組み立や配線作業など、実際作業者の手に委ねる割合が大きかった。製造工程の作業指図書、工程指導書など、いわゆる作業マニュアルに作業ミスの発生しやすい重要ポイントを詳細に記入して作業のミスの防止に取り組んできた。
 出荷品に不良品の混入を防止するために、検査の徹底が叫ばれたが、人間の五感で検査をする場合、その精度には限度がある。人間が神経を集中できる時間は20分程度が限度である。それ以上となると、人間工学的にも無理だった。
 1日中検査を担当する場合、集中してすべての不良を発見することは不可能。いくらベテランを当てても、100%不良品を発見することは困難である。検査で不良品はなくならない。
 
 だから、作業工程では、最初からミスのない作業をしなければならない。現場の作業を最も良く知っているのは作業者である。ベテラン作業者になるとミスの出やすい作業、不良品の発生しやすい部分について良く知っている。
 製造部門は、工程の品質を向上させるために、作業ミスの出ない作業方法、作業しやすい作業方法を検討する。作業方法は、設計段階で決定される要素も多い。やりにくい作業、ミスのでやすい作業をなくするために、設計部門へ構造の改善を要求する。
 製品の工程不良率を下げるために、サークル活動では、「層別、パレート図、特性要因図」など品質管理の手法を勉強して、原因を分析し、対策を検討し、提案し、問題を一つづつ解決する。
 検査ですべての不良品を発見する事はできない。つまり、検査で品質は良くならない。 だから、現場では、不良品を出さないよう、作業をしっかりやろうという合い言葉のもと品質向上に取り組むのである。


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