新連載
  その27   法律がころころ変わる中国


                     もっともな「3つの変わる理由」
 
 中国では法律が毎日のように変わるといわれる。
 今までスムーズに行われていたはずの部品や商品の輸入通関に随分と時間がかかった。輸入ライセンスの取得に、急に時間がかかるようになる。全く輸入制限のなかった商品が、突然、輸入禁止になる。先日まで適用されていた製品の輸入税率が上げられたり、新しく税金が設定されたりする。
 税関の官吏や通関する港湾都市によって、法律の解釈が異なるために関税率が異なることも何度か経験した。その時は、たまたま運悪く、厳しい人に当ったと、不運を嘆くだけであったが。

 こうしたことがよく発生する理由としては、次のようなことが考えられる。
 第一は、法律の制定される過程がわれわれの日本とは大変異なることである。中国では、WTOの加盟などを考慮し、各国の法律を大変よく研究している。新しい法律の必要が出てくると、他の国の法律を参考として、まず、通達の形で出される。出された通達が実施中に問題があれば、途中で改善変更される。出された通達が、ある期間、問題なく運用され、効果があると認められれば、その通達は法律として採用される。これらの経過が、なかなか分かりにくいシステムになっているために、突然法律が変わったように受け止められるのである。
 通達はもちろん有効であるが、管理組織の末端まで到達するには時間がかかる。中央都市であれば、その伝達速度も速いが、地方都市では遅れたり、漏れたりすることもある。また、組織のトップが多忙で処理できなかったり、長期の海外出張でもしていれば、その書類は机の上で眠ることになって、徹底が遅れる。通関する場所や都市により条件が異なる理由のひとつになっている。
 
 第二は、その法律や通達を解釈し、実行する官吏に違いがあることである。あの広大な面積を有する中国のことであるから、その都市や地方により、同じ通達も解釈や徹底方法に差が出てくる。日本であれば、通達であれ法律であれ、その解釈は一様に徹底されるので問題は少ないが、中国ではトップの考え方にかなり影響される。組織の方針や考え方は、トップ次第で大きく変わる。部下にとって上司の言うことは絶対であるから、上司の考えや方針が変われば、従来の方法は、すべて変えなければならなくなる。法律や通達の内容は変わらなくても、前回の結論と異なることも常に起こり得るわけである。特に、組織体制や人事異動があった場合は要注意である。

 第三は、地方により権限の違いがあることである。地方のトップによって、法律や通達がある程度自由に拡大解釈がなされる。つまり、法律も通達も、地方組織のトップの権限や個性で処理されることもあり得るということである。

 もっとも、このような原因からくる混乱は、日に日に改善されつつあるが、日本にいる時と同じような感覚でいると期待が裏切られる。特に日本国内の担当者に、「なぜそうなるのか。なぜ遅れるのか」を歯切れ良く、明快に伝えることができず相変わらず苦労する。
 この種の情報が、現地日本人担当者になかなか伝わりにくいことも原因するが、いずれにしても中国においては、最初から「法律や通達はよく変更されるし、担当者によって解釈の違いも少し大きい」というように考えておけばよい。常に法律や通達の動きについて情報網を持っておき、大きく変わる場合の対応の仕方については、日頃から研究し、知恵を出す方法も考えておかなければならない。


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