新連載
 その20  タンポポの綿毛は飛ばしてはいけない


                 芝生の手入れで家の資産価値が変る
 
 
アメリカを訪問すると、各家の庭が好く手入れされているのに驚く。なぜなら、手入れが良いかどうかで、その家の資産価値が変るからである。自分の家だけでなく、その周辺に手入れの悪い家があるとそれだけでも資産価値が下がるといわれる。だから、アメリカ人の庭は手入れが厳しい。良い住宅地ほど手入れをしてきれいにしておかなければならない。特に、芝生はよく刈り込まれ、美しくすることに怠りない。
アメリカ人に比較し、日本人は、庭や芝生にあまり頓着しない。駐在員の場合、たいていは、借家である。気に入らなくなると移り住むことを考えるので、今住んでいる家の資産価値にも関心がない。だから、芝生も 相当伸びないと刈ることは考えない。(勿論、丁寧に刈り込んでいる日本人も多い。)
 だから、手入れをしない人が引っ越してきて住むのは歓迎されない。庭の手入れの悪い日本人が住むようになると彼等の家の資産価値が下がると警戒される。日本人が住みはじめると、資産価値の下がらないうちに早々とその家を売って他の土地へ引っ越してしまうアメリカ人もいる。

私の友人も庭の手入れが良い方ではなかったようである。あまり伸びると、周囲から苦情が来るから仕方なく刈るくらいである。ある日、友人が住んでいた庭でゴルフの素振りの練習をしていた。すると近くに住む顔見知りの人がやってきて、注意をした。ゴルフの素振りをやる暇があるくらいなら、芝生を手入れして欲しいと。彼の家の芝生の手入れは良いとはいえず、部分的にはげてなくなっており、芝生のある部分は相当伸びていた。アメリカ人の多くは、自分で芝を手入れする。時間がなく、お金に余裕のある人はアルバイトを雇って芝生の手入れをさせる。結局、友人は、時間がないためアルバイトを雇って芝を刈らせたそうである。
日本人は、タンポポが好きである。タンポポの咲いたのを見て、春を感じ取る。そして、花が咲きおわり、丸い綿毛になったものを見つけると、強く息を吹きかけ飛ばして楽しむ。子供たちをつれた母親が、このタンポポの綿毛を見つけると大喜びでこれを風に飛ばして楽しむ光景を日本ではよく見かける。ところがこれをアメリカの住宅街でやったらヒンシュクものである。タンポポは彼等アメリカ人にとっては雑草の最たるものである。タンポポの綿毛を風に飛ばすことは雑草をはびこさせる原因になる。美しく手入れされた芝生の中にタンポポの種を飛ばされてはたまらない。芝生の中にタンポポが入ると、取り除くのが大変なのである。アメリカで、タンポポの綿毛を飛ばして遊んではいけないのである。  


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