日本版
6シグマ
社長さんへの手紙

 設備は古くても
今の受注品への対応には問題ありませんが!

  社長さんは「現有設備が古くて」とお客様からの量産受注について、遠慮深い話をしておられました。しかし、社長さんの会社は、古い設備でも社員がちゃんとメンテナンスし、使いこなしています。
 今までも、お客さんから受注した部品について、短期間に図面を作成し、詳細打合せを行い、試作品を作成し、チェックを受け、量産化する一連のプロセスを十分スピーディにこなしてきました。仕様変更の要望があった場合も、短期間で対応してきた実績があります。さらに、社長さんの会社は、工場の設備も含めて機械設備を増設するスペースも十分あります。
 この点からも、現在の受注に対応する上ではまったく問題はないと思います。何ら引け目を感ずる必要はありません。自信をもって、品質維持、コストダウン、納期短縮、さらに新規受注に取り組んでほしいと思います。


最新技術設備の導入は
社長自身の最たる経営課題
  
  確かに最近、お客様の要求する製品も毎年のように高度化、多様化、複雑化しています。納期の点でも厳しくなることが予想されます。一方、各種機械設備は精密化、自動化が大変進んできています。上手にソフトウエアを組んでスイッチを押せば、無人で翌日には高精度の部品が出来上がっている高度な自動加工機械もあります。
 社長さんの会社も、受注する加工品の幅を広げるためには、精密度の高い機械設備が必要です。システム設計エ技術者を確保し、こうした設備を導入し、使いこなすようにしなければなりません。これは時代の趨勢であり、社長さん自身の最たる経営課題です。危機感を持って、儲かっている間に手を打たなければならない課題です。
 社長さん、先ずは最新の加工機械設備展示会やセミナーに技術者を積極的に参加させ、情報を収集することから始めて下さい。安易に導入を決めるのではなく、現在の古い設備を最新設備で段階的に置き換える「設備更新計画」を吟味し、その上でその裏付けとなる「資金調達計画」を作成します。
 そのためには、今の受注生産体制での利益確保が最優先課題です。最新機械設備に対応できる技術者の確保も必要です。近い将来の社長さん自身の経営問題として、資金的な面と技術的な面の両方から検討を始めるようにしたいものです。(2009.11.2)


「日本版6シグマ」からの提案
勝っている間、儲かっている間に変革せよ!

 この中小企業は、現有設備が古くても、ちゃんとメンテナンスし、使いこなし、顧客からの受注を確実にこなしている。仕様変更にも短期間で対応している。利益も確保している。まさに、今上手くいっている会社である。しかし、ここでもジャック・ウエルチの「6シグマ語録」に学ぶべき教訓を見い出すことができる。
 ジャック・ウエルチは、「我々は壊れていないなら手直しは必要ない。問題が見つからないなら今のままでいいという言葉に従ってきたが、実際には、上手くいっている間に、つまり勝っている間に手を打つのが頭のいいやり方かもしれない。利益を上げている間に会社のあり方を変え、次をめざすのが本体の姿なのだ」という趣旨のことを語っている。
 これまで確かに、我々は取引先からの要求が厳しくなり、対応できずに廃業に追い込まれていく中小企業を多く見てきている。この「取引先からの要求が厳しくなる」ことは、技術革新の必然の方向である。特に下請企業として大企業にに依存している中小企業にあっては、予想外のこととしてではなく、常に危機感を持って肝に銘じておくべき問題である。今上手くいっていることにしがみついていてはならないのである。
 さらにジャック・ウエルチは、企業には二つの種類があるとして、一つは予想外の出来ごとが生じることはよくあることだが、「そんなことには慣れている」と言い切れる企業と、二つは予想外の出来事に対する備えができておらず、「まさか」と立ちすくんでしまう企業があると説いている。
 ジャック・ウエルチによれば、「6シグマ経営」のGE社は前者に属すると言う。そして、「今日、自分の会社の弱点に気がつかず、現状にしがみついているような経営者は長持ちしないだろう」として、「勝っている間、儲かっている間に変革せよ」と言いきっている。ジャック・ウエルチの「6シグマ経営」は、日本の中小企業の経営にも通じるものがあるということではないだろうか。


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