日本版
6シグマ
社長さんへの手紙

工作機械設備が泣いていました!

 先日社長さんの会社を訪問させていただきました。そして、たいへん驚かされました。まず、工作機械設備がたくさんあることです。広い工場にパワープレス、シャーリング、スポット溶接、旋盤、平面研削盤、自動平面研磨盤などなど板金加工に必要な機械設備はほとんどいって良いくらいそろっていたように思います。
 パワープレスなどは、小さなものから大型まで各種そろっていました。更に天井には、大型のグレーンが配置され、大型の金型を運搬取り付けするのに十分でした。しかし、私が見たところこれらの機械設備は、たいへん悲しんで泣いていました。
 理由はいくつかあります。まず手入れが良くないことでした。そしてあまり使ってくれていないことでした。各機械の周辺は、埃がいっぱいでした。機械の使用した油に埃が積もっており、機械の一部には錆が見えました。
 社長さんは「全部使えます」と自信を持って言っておられましたが、私にはそのようには見えませんでした。一部の機械は動いていましたが、最低限度の手入れしかされておらず、もうくたびれたと嘆いていました。
 他の会社の工場では、従業員が機械設備にもっと感謝の気持ちを持っています。社長さんの工場では、それが見られませんでした。ただ当面使えるように最低の手入れと油の補給がされているだけでした。従業員が機械設備に感謝する気持ちは全く感じられませんでした。


現場の品質管理の厳しさは
機械設備の手入れやメンテに現れる
 このような状態では、新しく取引を希望する企業が社長さんの工場を見学に来ても、5Sの不十分さを非難はしないでしょう。多分黙って引き上げるだけです。注文を出すことを諦めるしかなかったのです。なぜなら、機械設備が泣いているのを見たからです。
 あの管理状態では、製造される製品の品質も限度があります。板金プレス品も市場で受け入れられる最低限度の品質です。いつ品質不良が発生し、納期が遅れるかわかりません。安心して注文を出せる工場には見えません。
  小生も古い設備を持つ工場をたくさん見てきました。日本だけでなく、中国や東南アジアの工場も見てきました。確かに、製品の出来栄えや精度など日本品にはかなわないレベルでしたが、機械の手入れやメンテナンスだけはしっかりしていました。
 勿論経営者の厳しい指示があり、従業員がその通りにしないと解雇される理由もありますが、大抵の設備はぴかぴかに磨かれていました。5Sも徹底しておりました。従業員の技能のレベルはまだまだで、日本製品と比較して品質は劣っていましたがもうすぐに追いつくでしょう。
 社長さんの工場では、従業員は和やかに仕事をしてくれているようですが、自分たちがつくる製品の品質に対して厳しさが足りないようです。これが機械設備の手入れやメンテナンスにも現れています。
 機械設備は手入れやメンテナンスをきっちりしてあげれば毎日働いてくれます。寿命も長くなります。手入れを良くし、もっと稼働率を上げて機械設備に喜んで働いてもらえるようにしたいものです。(2006.7.8 中小企業診断士 加藤文男)


「日本版6シグマ」からの提案
お客の声「VOC」に真正面から取り組む!

 工作機械設備は十分揃っているが、見た目、手入れやメンテが不十分だということです。これは社長や従業員の性分のようなもので、機械設備がホコリをかぶっていても、錆ついていても、彼らにとってあまり気になることではないということです。
 有無を言わさず、「職場の整理・整頓、清掃、清潔」から入るのもいいですが、ここではお客さんからたびたびあるに違いないクレームや新規取引がなかなか実らないといった、現実の経営上の切実な問題に真正面から取り組むということではないでしょうか。
 「日本版6シグマ」では、この場合、それは社長からの指示、現場からの提案いずれであっても、経営上の切実な問題、すなわち「6シグマ課題」として取り上げることが出発点になります。
 お客の声「VOC」から、どんなクレームが多発しているのか、新規取引が上手くいかないのはなぜか等について、社長と現場が一緒の会議や研修を通して情報を集め、議論し、「それではどうしたらいいか、どう取り組むか」を検討する。
 会社の立派な資産である工作機械をしっかりメンテし、自分たちも技能を磨き、職場の5Sも徹底し、「お客の声に製品の品質管理の厳しさで応える」という取組みを自分たちの手で形にし、実らせなくてはならない。


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