日本版
6シグマ
社長さんへの手紙

息子さんへの
スムーズな事業承継のご準備を

  先日お伺いした際体調を崩されたとお聞きしましたが、その後いかがですか。社長さんはご自分でおっしゃっておられる通り、まだまだ十分元気に働けると思います。しかし、息子さんへの事業承継の準備を始めてもいい時期だと思います。息子さんは44歳です。事業承継には10年くらいかけるつもりで丁度良いのです。
 事業の承継といっても色々なことがあります。息子さんの代まで考えて、売上げと収益見通しを踏まえ、現在の事業方針のままでいいかどうかの検討が必要です。将来を見通しながら、息子さんへの事業継承に向け、経営強化策を計画的に実施してほしいと思います
 


現場の実務経験のため
計画的なローテーションを!
 先ず、息子さんへの事業継承を考えるにあたり、従業員に十分配慮した次期社長教育計画の検討が必要です。息子さんの年齢からすると、他社での修行経験というよりは、社内での実務経験が中心になりますね。計画的なローテーションを組み、各部門の仕事に実際に携わってもらって、会社にはどんな仕事があるかを学んでもらいましょう。
  
  会社にとって、工場の製造設備、運搬用車輌、原材料、製品全てが財産です。これらの財産を従業員がどのような扱い方をしているかを見てもらいたいものです。
 経理財務については、面倒でも帳簿の記帳までもやってもらいましょう。今は、便利なソフトがあります。実際に経理関係の数字をインプットしてもらい、会社のお金の動きを理解してもらいましょう。
 毎月の製品の売上、コスト、経費、利益の推移はどうなっているか。在庫が増えていないか。回収はちゃんとできているか。毎月の支払は滞っていなかい。払うべきものは即払っているか。特に、経理と財務の基本は、息子さんに実務を通して絶対に体験してもらいたいものです。

  ローテーションの期間は、実務に専念させ、現場の従業員と一緒になって問題の発見と業務の改善に取り組むようリードして下さい。その上で、従業員に「さすが、次期社長」と思われるような息子さんのリーダーシップ教育を心がげて下さい。
 次期社長に向け、視野を広めるために外部の経営者セミナーを活用するのも良いと思います。時間的余裕があれば、中小企業大学校の経営後継者研修があります。終業後や休日に開催されるセミナーもあります。そして他社の経営幹部と交流することも勧めて下さい。外部とのパイプ作りは、将来必ず役に立ちます。息子さんの後継者育成教育は、社長さんが元気でサポートできる間です。早速始めてはどうでしょうか。(2007.12.1 中小企業診断士 加藤文男)
 


「日本版6シグマ」からの提案
同族会社の後継者の育成に
  あせらなくてもいい「3つの理由」!!

 日本のみならず、世界の中小企業の中には同族会社が多い。同族会社は、複雑な家族間の人間関係があり、後継者についても適正な資質評価や能力育成プロセスを踏まず決定されることが多い。だが、次世代のために、よりよい会社をつくるという目標と情熱を持って、経営し、後継者を育成しようとしている同族会社もある。

 ジャック・ウルチも、適正な手続きを踏まず経営されるような同族会社は専門外だと思っていたが、同族会社にも「6シグマ経営」が役立っていることが多いことに気づいて、非常にうれしく思ったと語っている。
 ここでは、彼の「同族会社の社長が後継者の決定と育成にそうあせらなくてもいい」という「3つの理由」を紹介しておきたいと思う。
 第一は、成長の速度は人によって異なるということである。息子を後継者にすると腹を決めたが、時間がたっても期待ほど成長が見られない場合もある。やはり候補者としていろいろな仕事につかせ、観察し、その上で最終的に判断すればいい。
 第二は、息子といえども、早く後継者にすると発表してしまうと会社を混乱に陥れる可能性があるということである。あんな息子が社長ではとでもやっていけないと有能な人が辞めていく。それは止むをえないとしても、その代りとなる人材を育てておかなければならないが、それには時間がかかる。
 最後に、社長長自身、すばらしい業績を上げ、仕事を楽しんでいるなら、早く引退してしまうつもりはないだろうということである。何十年と会社の第一線に立ち、会社を発展させてきた、社長としての先見性と能力からして、後継者問題についても秘めた考えを持っているはずだ。それは後継者にも社員にもいずれ理解し、納得してもらえるものであるに違いない。


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