日本版
6シグマ
社長さんへの手紙

小回りが利く会社とは、
取引先の言いなりになることではない!

  中小企業の強みは、「小回りが利くことである」と言われています。「小回りが利く」とは、どのようなことでしょうか。
顧客の要求に柔軟に対応できること
つまり、
@日程など無理を聞いて対応できること
A仕様や性能など要求の変更に対応できること
Bコストダウンの要求に対応できること

 但し、誤解してはいけません。「小回りを利かせる」ことで要した費用は、顧客に正当に要求することができます。無償でやることではありません。 


小回りを利かせて対応する?
かかるコストを想定し、経営判断で!
 ご承知のように、「顧客の要求に、小回りを利かせて対応する」ということはコストがかかることなのです。短納期に対応しようとすれば、残業で対応しなければなりません。仕様を変更すれば、不要なものが発生し、捨てなくてはならなくなるものも出てきます。それまで要した人件費、電力代も無駄になることを忘れてはなりません。
 これらはすべて納入品のコストにはね返るのです。顧客の要求変更にかかるコスト見通しを踏まえ、これにどう応えるかは、経営判断が必要です。
 
顧客の要求変更への対応コスト
顧客負担が原則!
 小回りを利かして対応したことで発生する費用、この負担については、全て最初から話し合いに入れておくことです。相手は要求を変更すれば、費用がかかることは十分承知の上です。御社が負担する必要はないのです。そのコストはメリットを享受したところが支払うべきなのです。正当に要求すれば良いのです。だが、黙っていれば支払ってはくれません。請求がなければ、相手は「うまく言った」と思ってニコニコしてくれるでしょう。
 もし、顧客の要求変更に無償で対応する習慣がついてしまうと、「あの会社は少々の変更は無償でやってくれる、又やらせれば良い」となります。無償ということになれば、変更を簡単に要求するようにもなります。
 
要求変更に対応した場合
先ずは、請求書の発行を!
 実際にかかった費用は、請求書を出せば良いのです。最初に約束していようといまいと、要求変更に対応した場合は、先ず、請求書を出すことです。
 1回目は「予定していなかったから、何とかしてくれ」と多分言ってくるでしょう。そのときは、事情を考慮して回答をします。「しかし、次回からはそうは行きませんよ」と釘をさすことを忘れてはなりません。
 このように、先ず請求書を発行することで、次から要求変更がある場合は、どのくらいコストがかかるか打診してくるようになります。いかなる要求変更も「無償では受けられない」という原則を貫くべきです。
 
小回りが利く会社
経営と現場が一体となった対応力が必要
 このような交渉は、顧客との信頼関係を築くことにつながります。問題は、信頼関係がつくれるかどうかです。そのためには、要求変更にかかるコストは、理にかなったものでなければなりません。顧客からの色々な要求変更に対して、コスト計算ができる体制が必要です。
 このような交渉ができなければ、御社の出す外の見積も信用されないと考えたほうが良いでしょう。顧客に遠慮して要求しないのであれば、それは自ら信用を落としていることにつながるのです。言い換えれば「なめられる」結果になるのです。もしコストを要求して取引が終るというのであれば、御社の力量はその程度と知るべきでしょう。御社はそのような会社でないことを示したいものです。

 ある顧客の要請に小回りを利かせて対応した結果、他の顧客にシワ寄せがいくようでは「小回りが利く会社」とはいえません。「小回りが利く会社」には、経営トップと現場が一体となった対応力が必要なのです。本当に小回りが利かせられる会社かどうか真剣に考えたいものです。2006.6.25 中小企業診断士 加藤文男) 


「日本版6シグマ」からの提案
経営トップと現場、顧客を巻き込んだ
「6シグマ」が小回りの利く会社づくりにつながる!

 一般に、日本の中小企業にあって、顧客から受注している製品の仕様や納期や価格について、一方的な要求変更の要請はよくあることだ。しかし、その緊急度、重大性はマチマチであり、要請を受ける側にとっては、特に売上利益の維持・拡大の面から、また自社の実力の面から、これにどう応えるか、応えるべきかはきわめて重大な経営判断が求められる。
 「日本版6シグマ」の視点から言えば、先ずは、経営トップの役割が重大です。顧客の要求変更の要請はどのくらい緊急で重大か、自社の対応力はどの程度か、どれくらいコストがかかるかを判断し、その結果によっては顧客の協力を取り付け「6シグマ課題」として一緒に取り組む体制づくりをスタートさせなければならない。
 現場にあっては、顧客の要求変更の中身について、即ち「VOC」を個々にデータ化し、「我が社として、それぞれの業務部門別に、『何のために、何を、いつまでにどうする』を明確にした「6シグマサブ課題」についての問題解決体制をつくる。
 経営トップと現場、場合によっては顧客を巻き込んだ「6シグマ」へのスピーディで確かな取り組みこそが、「小回りの利く会社づくり」につながる道でははないだろうか。


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