日本版
6シグマ
社長さんへの手紙

あの時手形を発行していれば
今頃倒産です!

   顧客への支払いを遅らせる手段、手形。これを利用しない経営者は、「金の使い方を知らない」とか「事業を知らない」とか良いほうには解釈されないのが従来の日本の悪い習慣である。
 昔のように金利の高い時期には確かに利用する価値がありました。単純に言えば。その間の金利を稼ぐことができました。今は金利が1%でも、手形の方が有利のような気がしますが、安易に発行すると管理に相当手間と神経を使わなければならなくなります。


手形の発行は
事業経営を安易にする!
 本来.、何かを購入した代金はできるだけ早く現金で支払うのが筋です。手形の発行が当たり前になってしまうと、経営者を怠惰にしてしまうこともあります。支払いを60日、90日、120日と遅らせることで、ある期間、運転資金繰りが楽になることは確かです。しかし、いずれ、代金は支払わなければなりません。
  その場しのぎの手形の発行は、法的には問題ないですが、最適な手段とは言えません。事業の運営を安易な方に流すことにもなります。それよりも、毎月支払うべきは支払うと言う姿勢の方が大切です。

 社長さんのところは、創業以来手形の発行はしていませんが、手形は受け取ることもできるだけ避けなければなりません。取引関係のある協力会社間にあって、どこかが手形を発行すれば、連鎖反応でその取引先も手形を発行せざるを得なくなります。商売には相手のあることで止むを得ない場合もありますが、資金繰りに苦労しなければならなくなります。手形の発行は、本来断ち切らなければならない制度・習慣だと思います。

 先月のように、資金繰りの苦労が続くと、つい手形に頼りたくなるのはよく理解できます。手形が不渡りになると、世間は冷たいものです。あの時、手形を発行していれば、社長さんの会社は倒産したかも知れません。幸い手形を発行していなかったために、少し返済が遅れはしましたが、広く世間に迷惑を掛けずに済みました。手形の発行がなければ、融通手形の誘いもなくなります。それがかえって信用を高める結果にもなりますね。

 金融機関のためにも、手形は発行した方が良いともっともらしく言う人もいます。しかし、無理をして金融機関の融資を受けてでも、手形はできるだけ避けたいものです。社長さんのあの時の「無理してでも現金払い」という経営判断とがんばりに敬意を表します。これからもこの気持ちをお忘れにならないで下さい。(2007.6.14 中小企業診断士 加藤文男)


「日本版6シグマ」からの提案
1個売りと現金取引きの商売で
相互の繁栄を!

 特に中小企業の場合、協力会社の一員として、「Q(品質)・C(コスト)・D(納期)」の向上という「6シグマ課題」に取り組めば、その成果に見合って利益を享受することができる。ここで「日本版6シグマ」は、一企業の問題ではなく、協力会社全体に共通した問題として、「6シグマ活動」に取り組む協力会社間の「取引条件」の問題を重視している。
 商売の原点は「1個売りと現金取引き」であると言われるが、かつての高度成長時代の大量生産、大量押し込み販売にあっては、手形による支払いが常識であった。今日のような低成長時代は、取引社間の相互の現金取引でお互いの利益を確保する時代である。
 協力会社間の取引にあって、ある会社が支払い条件を長くして得をしているつもりでも、その結果が、取引先の資金繰りを苦しくさせ、体質を弱くし、ひいては「Q・C・D」で表わされる競争力を低下させる。つまり、協力会社全体が手形の発行等によって、「Q・C・D」が低いレベルの製品を調達し、結果として損をするということになるのである。
 この逆を考えれば、現金払いは「金の使い方を知らない」とか「事業を知らない」とかの問題ではなく、取引先のものづくりの競争力を強化し、ひいては自社の競争力を強化することになる重大な課題である。つまり、現金払いによる買い方の改善こそが、取引先との信頼関係を深め、その結果として、現金買いをしている製品一点一点に対する「Q・C・D」の改善を厳しく提案できることにつながるのである。 


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