日本版
6シグマ
社長さんへの手紙

新人社員の観察眼を大切にし
職場の5Sの改善提案を引き出そう!

 先日、御社の新人社員と立ち話でしたが面談する機会がありました。その際、「5S」についての意見を聞いてみました。彼の前の会社では、工場の中がもっときれいに整頓されていたとのことでした。
 東南アジアや中国の工場でも、日本の「5S」が実施されるようになっています。日本のメーカーの購買担当者や品質管理担当者の誰もが、工場診断の際に「5S」のことを要求するようになったからでしょう。現在では、日本の中小企業の方が、「5S」の実践から取り残されているのではないかと思われるほどです。
 社長さん! 先日お会いした時には、「うちは5Sを徹底している」とおっしゃっていました。私はまだまだ改善の余地があると申し上げてきましたが、社長さんは「問題ない」との事でした。しかし、特に生産現場内での治工具類の管理状態には問題がありそうです。治工具類の整理整頓は、品質問題や事故の面からだけでなく、作業効率アップの面からも重要な「5S課題」です。


治工具の整理整頓で作業効率改善を!
 御社は、昨年度生産設備の更新に結構大きな投資を実施しました。これで自動化も合理化も大分進みました。しかし、使用する冶工具の管理には、まだまだ改善の余地があります。冶工具が乱雑に置かれていて、移動台車のスムーズな動きを制限しています。また同じような種類の冶工具類が工程ごとに置かれています。作業をする人に聞いてみると、冶工具の中には各工程で共通して使用できるものがほとんどとのことでした。社長さんはこの辺の事情は良くご存知のはずです。これからの工場の作業効率アップにとっていい改善テーマになります。

  各工程で同じ冶工具を同時に使用することはめったにないようです。冶工具類は、出し入れのし易い棚に集めて整理整頓すれば、管理が容易になり、在庫も少なくでき、メンテナンスも楽になります。私の見たところ、最初に訪問させていただいた時より、治工具類の「5S」は乱れてきています。整理棚の購入を機会に、治工具類だけでなく、工場全体の「5S」を見直して下さい。 

 新人は新鮮な観察眼を持っています。しかし、時間の経過とともに、現在の職場の状態が当たり前になってしまいます。新人の新鮮な観察眼を尊重して、「5S」の改善提案を引き出し、職場の意識改革、作業の効率改善を呼びかけることにしたいものです。(2007.7.7 中小企業診断士加藤文男)


「日本版6シグマ」からの提案
現場の「5S」で
「躾」の重視と業務の効率化を!

 「日本版6シグマ」では、「6シグマ課題」の設定と解決のために、「情報の整理・整頓」を重視している。個々の情報について、言わんとしていることを簡潔にステートメント化し、課題の設定と解決にタイムリーに活用できようファイリングする。こうした「情報の整理・整頓」に加えて、「日本版6シグマ」が「5S」の問題を重視している理由として、次の二つを上げることができる。
 先ずは、職場環境の「整理・整頓」の重視である。作業効率を上げるという「Work Out」のために、作業環境の中で不必要なものを整理し、必要なものを使いやすい位置に整頓する。この「整理・整頓」を通して。目に見える形で、無駄のない、スピーディな業務プロセスへ改善することが可能になるのである。
 次は、「5S」の最後の「躾」の重視である。「躾」は従業員が職場で仕事や仲間やお客に向き合う際に求められる「姿勢、態度」のようなものである。ここでは、日頃の職場での「整理・整頓」、さらには「清掃・清潔」という具体的な環境づくりが行われている。こうした主体的な取組みこそ、自分たちで作り上げようとしている職場環境にふさわしい働き方、即ちマナー、習慣ともいうべき「姿勢、態度」といった「躾」の部分が、職場全体に自ずと定着するようになると考えるからである。


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