日本版
6シグマ
社長さんへの手紙

後継者を考えましょう!

 精密加工や高度な加工を専門のファブレス企業の社長さん、毎日お元気で何よりです。毎月好成績を継続されており、当面財務的には心配ありませんね。

 ところで、今まで社長さん一人で営業をやり、注文を獲得してきたと言っておられましたが、60歳を超えるとそろそろ身体的にも無理がきかなくなります。思わぬトラブルに巻き込まれることあります。

 後継者の話になると、社長さんは「今まで、俺について来ることができた従業員はいなかった」と嘆いておられます。しかし、そのような考えでは、経営が維持できなくなる恐れがあります。
 次期社長とまではいかなくても、5年後には会社の経営をある程度任せられる後継者、さらには組織づくりに時間とお金とエネルギーを使っても良いと思います。
 ご長男がいずれ会社を継いでくれるかもしれないという淡い期待はお持ちのようですが、小生の見たところ、それは難しそうです。ご長男は、ご自分の道を成功に向かって歩んでおられるようですので、ブレーキをかけないほうが賢明です。


取引先に対して
「会社は俺の代だけ」では済まされない。
 現在の取引先も心配し始めています。「後継者がいない」、「会社は俺の代だけで良い」という考え方もありますが、そんな話を聞いた取引先はどのような思いに駆られるでしょうか。
 現在、社長の会社から供給を受けている部品が、近い将来入手できなくなる危険があるとすれば、取引先は別の供給先を探しはじめて当然です。社長の都合で部品が入手できなくなったでは済まされない話だからです。
 製造業は、一度供給始めたらそれを継続する義務も責任もあります。その辺で販売されている代替可能なノートや鉛筆など基本的に違います。社長さんの製造する部品は価値もあり、社会に対する貢献の度合いも違うのです。

社長の優秀さ故に自分は正しいとする
マネジメントスタイルにこそ問題が!
 これからは従業員のいうことに耳も傾け、後継者を育て、会社を継続することを真剣に考えて下さい。
 確かに、大企業での長い経験がある社長と同じレベルで経営ができる従業員はすぐには見つかりません。社長さんの実力は数十年の経験を踏まえでき上がったものだからです。今まで、社長についていけなくて貴社を去っていった何人かの社員の話もお聞きしましたが、彼らが頭の回転が速く、行動力のある社長さんの実力についていけないのは当然です。
 しかし、従業員の側に問題がないとは言えませんが、最大の問題は、社長さんの優秀さとその優秀さ故に自分は正しいとするマネジメントスタイルにあります。社長自身の「会社の後継者がいない」という嘆きは、会社の経営を唯我独尊、指示命令でしか動かない組織にしてしまっている結果であるということではないでしょうか。
 
 社長さんも最初から現在のようなマネジメントスタイルを良しとしてきたわけではないと思います。若かりし頃を思い起こしながら、後継者として誰かを育てるというよりは、社長さんの経営に対する思いや夢に少しでも共鳴し、一緒に働いてくれる社員を大事にする組織をつくることこそ、自分に課せられた最大の経営課題であるという自覚をもって、時間とお金とエネルギーを使ってほしいと思います。現在のお元気さならば、まだ十分に時間はあります。それが現在取引をしてもらっているお客様への恩返しでもあるのです。この件については、また改めてお話しましょう。(2006.5.25 中小企業診断士 加藤文男)


「日本版6シグマ」からの提案
社長自らが指示命令でしか動かない組織に決別を!

 「社長自身の優秀さ故に、後継者が育っていない」という現実は、「日本版6シグマ」からすれば、「指示命令でしか動かない組織、それでも良し」とする、社長自らが唯我独尊的な「M0型組織運営」に甘んじてきた結果であると言える。
 ジャック・ウエルチは、「6シグマ」の導入、展開にあたり、社員一人一人に自分の仕事に自覚を持って欲しいと述べています。つまり、「仕事の指示を待っているようでは困る。社員自身が意志決定してよい。自分たちの運命は自分たちの手にあるのだ。自分たちも会社の経営に参加しているという気持ちをもって欲しい」と訴えました。

 アメリカの指令統制型の「M0型組織」は、1970年と80年代にかけて、米国企業を事実上没落に追い込んでいました。ウエルチはGEの中にも根を張っているこの組織構造を壊さなければならないと考えたのです。
 ここで登場する精密加工や高度な加工を専門のファブレス企業の社長さんも、思い切ってジャック・ウエルチに学び、世の中に貢献し続けられる組織づくりに、時間とお金とエネルギーを使ってほしいと思います。


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