という
日本版
6シグマ
社長さんへの手紙

会社の財産「技術・技能・ノウハウ」は
継承されていますか!

 昔、日本企業が工場の海外進出を始めた頃の話です。当時、東南アジアや中近東各国から研修生をたくさん受容れて技術や技能の指導をしておりました。
 しかし、彼らが帰国しても、日本で教えた技術や技能やノウハウが現地社員へ伝わることはほとんどありませんでした。現地研修生に渡されたマニュアル等は個人のロッカーにカギをかけ、他人に見られないようにしていました。日本で学習したことを、同僚や部下に指導するどころか書類も見せることもなかったのです。
 技術や技能やノウハウを部下に教えると、部下の能力が向上して自分の存在価値が相対的に低くなるというのがその理由でした。
 戦後の日本では、多くの技術者や研究者が欧米諸国の工場を見学し、セミナーに参加し、新しい技術を身に付けて帰国しました。これら学んだ知識だけでなく、資料も社内外に広く公開され、研修会や研究会の形で伝えられました。日本では、海外で学んだことが個人で独占されることはなかったのです。
 今、社長さんの会社では、かつて東南アジアで起こったようなことが見られませんか。先輩社員の技能や技術やノウハウが後輩の社員に継承されずに、定年で退職すると共に消えてしまう危険性はありませんか。


第一信
国際的な競争劇化の中
技術・技能の継承は死活問題

 部下や同僚に継承 先輩社員の技術や技能やノウハウが部下や同僚に継承されていない理由として、社員が技術や技能を勉強しようとしない、教える方も時間がないということもあるかも知れません。無理な納期に追いまくられ、自分の仕事優先で、部下を指導する時間がとれないということもあると思います。
 リストラが横行し、いつ自分もリストラされるかわからない身では、教える気にもならないという意見や苦情もあります。
 一方、大手企業でリストラされた中高年の技術者や技能者が、中国や韓国の企業で採用され、現地の社員に技術や技能やノウハウを指導している人がたくさんいます。東南アジアや中国などの企業で教えた方がお金にもなるし、喜んでもらえるので生き甲斐、働き甲斐があると言っています。海外で生き生きと働いている実態が多くあります。
 
 日本の会社で培われた技術や技能やノウハウが世界の各地で有効に使われることは大変喜ばしいことですが、社内で活かされていないのは大変もったいない話です。生き残りをかけた国際的な競争が厳しくなってきている折、技術・技能・ノウハウの継承は死活問題。手をこまねいている問題ではありません。


第二信
「技術・技能・ノウハウ」の継承中断
3つの原因

  先日手紙を書きました技術・技能・ノウハウの継承の中断について、もう少し詳しく私の経験をお話しましょう。
 技術伝承中断の原因には、大きく分けて、「技術や技能やノウハウを持つ人に起因する」ものと「企業の制度に起因するもの」があります。
 個人に起因するものには、第一に「仕事が忙しくなって若い人たちに教えている時間がなくなった」ことです。発注先のコストダウンの要求がとても厳しくなりました。そのために短時間、短納期で製品を完成しなければならなくなったのです。
 
 二番目は「成果主義」です。仕事の表面的な成果が厳しく問われることになり、若い人の指導が正当に評価されなくなっている。これでは、教えることに時間を割くより、自分の仕事に精を出して成果を挙げた方がいいということになってしまいます。
 
 三番目は、「リストラ」の問題です。ある友人の話ですが、若い人が友人と同じことができるようになると高い給料の彼が不要になる。これでは現場の技術・技能・技能・ノウハウの継承が問題だといっても、教えるだけ損のような気になります。リストラされては、会社等どうなろうと関係なくなるわけです。
 昔、と言っても25年ほど前の話ですが、東南アジアや中近東からプロジェクトのためにサービス・メンテナンスする技術者がたくさん日本へ来て多くのことを学んで帰りました。我々は、代表できたのですから、日本人は本当に真剣に教えました。そして、帰国したら彼らの部下となる人にすべてトレーニングするように頼みました。正しくメンテナンスしてもらわないとシステムトラブルの原因となるからです。

 しかし、現地のオペレーションに出張して確認する機会があり、愕然としました。日本に勉強にきたはずの彼らは、「ハイ」と快く返事をして帰りましたが、全く実行してくれていなかったのです。渡した資料は他人に見られないようにすべて彼らのロッカーに鍵をかけてしまわれ、トレーニングもされていませんでした。

 良く聞いてみると「もっともな話」であると理解できました。彼らは、中近東のその国で働くために周辺諸国からに出稼ぎ技術者でした。プロジェクト発注先のその国では、サービス・メンテナンスをする優秀な人を募集して採用し、彼らを日本に送り込んできたのです。彼らが指導して技術や技能を他のメンバーに教え込んでしまうと彼ら自身が不要になるのです。同じ能力があれば元気で体力のある人が頼りにされ、高い給料の人は、解雇されてしまうのです。

 今、これに近い状況が日本でも起きています。本当に考えさせられてしまいます。(2006.10.14 中小企業診断士 加藤文男)


「日本版6シグマ」からの提案
6シグマ戦略の構築と実践のために
会社の財産「技術・技能」の継承とさらなる発展を!

 「日本版6シグマ」は、製品やサービスの目標とする品質レベルやコストや納期のバラツキを「6シグマレベル」に抑えるための「BSTプログラム」の問題解決手法としての確かさが売りである。
 国際的な競争劇化の中、大企業であれ、中小企業であれ、零細企業であれ、世界で通用する競争力ある事業に絞って、即ち「No.1、2事業戦略」をもとに、これまで蓄積してきた「技術・技能・ノウハウ」を基盤として、「6シグマレベル」の製品やサービスを提供していくことを目標にしていかなければならない。
 ここでは、より確かな勝利に向けた「6シグマ戦略」の構築と実践のために、問題解決手法としての「BSTプログラム」の活用に加えて、日本企業の財産でもあり、基盤でもある現場の「技術・技能・ノウハウ」をさらに継承・発展させる現場力が決め手になってくるに違いない。


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