日本版
6シグマ
社長さんへの手紙

50名の会社を3名で管理する
フラットな経営を見せて戴きました!

 先日、社長さんの会社で電子機器組立製造業におけるフラット経営の実態を見せて戴きました。従業員50名を超える会社を中間管理職なしで、社長、工場長、総務部長の3名体制で運営し、年間10億円以上を販売し、安定した利益を確保している経営に驚いています。
 一般に日本の経営者は、中小企業でも従業員が多くなるとピラミッド型の組織体制でなければ適切に管理できないと思い込んでいます。ピラミッド型の組織体制では、部門ごとに中間管理職を置き、それぞれに業務役割を分担させています。その代わりに、経営トップの方針の徹底や部門間の意見調整のため、打ち合わせや会議等に相当長い時間を取っています。そして、多くの企業では、こうした時間は会社運営上当然必要ということになっています。


確かでスピーディな意思決定ができる
シンプルな組織づくりのモデル!
 社長さんがフラットな経営体制を確立した背景には、元システムエンジニアだったご自身の「製品の組立工程では、必要最低限の入力にとどめ、無理、無駄をなくすことが原則」という基本的な考えがあったそうですね。
 確かに、工場の「生産管理システム」の画面表示を見れば、日々組み立てる製品とその数量が明確で、社員それぞれがどのように行動すればよいか判断できるようになっています。こうしたシステムを軌道に乗せるまでには、貴重なノウハウの蓄積が相当あったに違いありません。
 社長さんの会社では、社長、工場長、総務部長3名の分担体制で経営がなされています。確かに課長も係長も一人もいません。こうしたシンプルな組織体制では、社内の意思意志決定は短時間で済み、結論も早くなります。中間管理者への説明が不要になり、経営陣と従業員、部門と部門とのコミュニケーションも密になり、現場からのアイデアや提言も取り上げられ易くなります。3名には、それぞれに高い判断力と上手なコミュニケーション力があり、その業務は密度の濃いものになっているはずです。あらためて現在の経営体制を軌道に乗せるまでには、大変なご苦労があったと推察致します。

  社長、工場長、総務部長3名の体制で50名の会社組織を運営できる企業の存在は、簡単に真似をしてできるものではないと思います。しかし、中間管理職の人件費削減というような問題だけでなく、確かでスピーディな意思決定ができ、現場のやる気を引き出しやすくするシンプルな組織体制をつくる上で、社長さんの会社は一つのモデル足り得ると思います。日本の中小企業も、こうした会社の実態を知り、挑戦する意味があると思います。社長さん、この度の「生産管理システム」の案内、有難うございました。 


「日本版6シグマ」からの提案
企業の規模を問わず、顧客満足に向けて
さらなる「People Out」を!

 ジャック・ウエルチは,、「6シグマ経営」の一つの柱である「品質、コスト、納期」の改善活動を通して無駄な仕事をなくすという「Work Out」によって、GE社を世界トップの企業にした。さらに「顧客満足」に向けてもっと競争力のある企業へ、そのためにはもっと均整のとれた力強い企業にする必要があるとして、GE社の組織をよりスリムにすることに執着した。
 ジャック・ウエルチは、社内の意思決定をスピーディにし、経営陣と従業員、部門と部門とのコミュニケーションを密にし、そしてGE社を現場からのアイデアや提言を何よりも重視する企業文化の会社にするとして、無駄な水膨れした中間管理職を排除し、形式重視の管理で仕事を遅くしている官僚主義を排斥した。即ち、社員を整理し、組織をスリムにする「Peole Ou」の実行である。
 ジャック・ウエルチは、ますます競争が厳しくなる世界で生き残るためには、GE社のように巨大な企業こそ、大きな会社という意識を持った行動や考えを改めなければならないと信じ、そのためには、小さな会社のように、組織をスリムにして、身軽に機敏に行動できるようにしなければならないとして、「Peole Ou」を実行したのである。
 この「Peole Out」からは、ジャック・ウエルチからのの日本の中小企業の社長に対するエールを読み取ることができる。「日本の中小企業の経営に、さらなる自覚と自信を!」という思いを込めて、次に、ジャック・ウエルチの言う「小いさな会社のように行動する」ということの真意を整理しておきたいと思う。

小さな会社は
○コミュニケーションがよい。
 社員一人一人がよく理解しあっている。
○動きが早い。
 もたついた時の
 市場でのしっぺ返しをよく理解しているから。
○階層が少なく、
 リーダーの仕事ぶりはごまかしがきかない。
○延々と続く会議、承認、駆引き等ムダがない。
○社員は重要なことに
 自分のエネルギーを集中できる。
 
 しかし、「小さな会社」も優秀な人材がいなければ、その効果は発揮されない。大中小を問わず、企業が求める優秀な人材とは? 最後に、ジャック・ウエルチがある講演会で、一人の女性からの「人を採用するにあたり、一つだけ質問するとしたら、面接で何を尋ねますか?」という質問に対してのやり取りを紹介することにしたい。

「一つだけ? 
「たった一つだけですか?
「考え付かないな。
「あなただったらどうします?」

「分からないからお尋ねしているんです!」

 そこで、ジャック・ウエルチは、人材採用は実に重要で難しいが、採用を考える前に、企業の規模、業種、職務を問わず、チェックすべきポイントが三つあると答えている。
○誠実かどうか?。
○知的好奇心がたっぷりあるか?
○成熟した人か?
 
 特にリーダーの採用にあたっては、次の4つのE」と「一つのP」が大事だと語っている。
○Energy:エネルギー
○Energize:周囲の人にエネルギーを吹込む能力
○Edge:決断を下す勇気
○Execute:仕事を実行する能力
○Passsion:仕事に対する情熱

 最後に、部門長等のトップクラスについては、次の「4つの力」がるかどうかを見る必要がある語っている。
○自信と信念を持って生きる力。
○将来を予測できる力。
○自分を超える優秀な人材を集められる力。
○失敗しても立ち直れる力。

 そして、女性からの「一つだけ質問するとしたら、面接で何を尋ねますか?」という質問に対しては、「なぜ今の仕事を辞めようと考えているのか、なぜ、前の仕事を辞めたかを聞くだろう」と答えている。
 さらに「人を採用することは、最適な人を見つけ、仕事をまかせることだ。重要なのは、応募者の話をよく聞くことだ。仕事をなぜやめたのか、辞めようとしているのか。人の採用にあたって、この質問への答えから多くの情報を引き出すことができる」からだと、その理由を付け加えている。


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