日本版
6シグマ
社長さんへの手紙

発注元からの仕様書に
問題があるとのことですが!

 先日社長さんは、製品設計者の能力低下を心配されていました。発注元が設計した機構部品の図面に問題があるとのことでした。社長さんの会社に要求する部品の適正公差を設計者が理解しておらず、必要以上に厳しい公差が記載されていたようです。私も最近同じような事例を他でも聞かされました。

 この原因には、社長さんのおっしゃる通り、設計者の能力低下だけでなく、先輩や上司にも問題があるように思われます。検図が十分徹底されていないという問題です。検図というのは図面に間違いなく製造のための情報がすべて入っているかの確認作業です。例えば、機構部品の図面であれば、「原材料の材質は適切か」「必要な強度は確保できるか」「加工精度は厳しすぎないか」等々必要な情報がすべ記載されていることの確認です。

 記載があっても、必要以上の加工精度であれば、製造コストが上がってしまいます。材質を間違えれば十分な強度が得られなくなります。設計図面には、製造するための必要な条件が漏れなく記載されていなければなりません。これらの条件がすべて記載されているかどうかを先輩や上司が確認するのが検図です。社長さんは、設計担当者の能力不足よりも、部門としての注意力不足、あるいは手抜きが問題だと心配されているわけですね。 


発注元と図面をもとに率直な意見交換を!

 従来設計部門では、図面の完成前の検図は大変重要視されてきました。検図は部下の能力を評価すると共に部下に対する指導訓練を実践する場です。ところが十分な検図がなされず、未完成な図面が出てしまっているわけです。

 社長さんの心配通り、設計者の能力低下だけでなく、先輩や上司にも問題があるように思われます。指導訓練する立場の先輩が多忙過ぎて、手抜きになっているのかもしれません。多くの企業が成果主義を導入しているため、先輩社員や上司も自分の目標達成が優先で、後輩や部下の指導どころではなくなっているのかもしれません。

 今まで、日本製品は世界から「Made in Japan」として高品質が期待され、これに応えてきました。このままでは日本の将来の「モノ作り」も大変気になります。「モノづくり」は、設計段階で基本を徹底することが重要です。私も機会をとらえて、この問題を提起し、注意を喚起したいと思います。社長さんは、発注元が発行した図面をもとに製品をつくる立場にあります。先方と率直に意見を交換していただきたいものです。


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