新連載

  その6  ココム規制はなくなったが


                −輸出許可に時間がかかり、納期遅れの恐れー

 ベルリンの壁がなくなり東西の冷戦状態は一応なくなった。これにより、1994年3月ココムは解散し、「対共産圏国向けの輸出規制」はなくなりロシアなどへの輸出規制は大分緩和された。しかし、民族や宗教を原因とする、地域紛争はなくなっていないだけでなく、むしろ多くなっている。テロ活動も多発している。このために全世界に対しての大量破壊兵器などの拡散防止と通常兵器の過度な蓄積防止のための輸出規制がかけられている。これを安全保障輸出管理と言う。日本もこれに協力している。

 我が国では、外為法の第1条にて、貿易は自由に行われることが基本と定められている。ただし、必要最小限の管理、又は、調整を行うと言う原則を示し、規制対象の貨物(該当貨物)と海外への規制対象技術の提供を行うことについては、輸出許可と役務取り引き許可が必要である旨を定めている。

 まず、海外へ持ち出す製品がこの安全保障輸出管理の規制対象であるかどうかの判定が必要である。武器や弾薬は勿論だめである。電子機器はその種類と技術レベルにより制限を受ける。特に、暗号を使用しているものは注意を要する。法的には、56ビット以上の暗号を使用してしていると、輸出規制の対象貨物になり、通商産業省の許可が必要になる。
 許可を取るためには、輸出をして使用する相手先の素性を明確にしなければならない。軍隊が相手であれば、まず許可がおりない。さらに、相手先によっは、輸出許可を取るのに相手先の誓約書を取る必要がある。その製品を転売しないこと、他の用途に使用しないことなどの誓約書である。このようにして輸出の許可をとるために長期間かかることもありうる。
 家電製品は、使用目的や用途が明確なので楽であるが、通信機器で暗号を使用するものは軍隊の通信用に使用される恐れがあることで確認が必要になる。問題は、化学材料を含む原料や材料である。本来の目的と異なる用途に使用されることもありうる。用途を正しく説明せずに購入することもあるかもしれない。悪く考えれば、兵器産業や軍事用に使用することは最初から隠して、購入することもありうる。知らないうちに兵器産業に使用されないとは限らない。法律は、それでも実際に輸出した者を問題にする。知らなかったではすまないのである。販売する相手先を十分調査し、軍事用に使用されないこと転売の恐れのないことまで確認する責任がある。安全保障輸出管理に関する法律を十分調査した上で、規制される貨物かどうかを判断し、該当すれば相応の輸出手続を考えなけらばならない。

  また、国際間の商売では、先方との打ち合わせをするために色々な技術資料を準備し、これを相手に提示したり、渡したりする必要が出てくる。技術者の同行する海外出張での打ち合わせには注意を要する。持参する資料や技術者がなにげなく持ち出す資料も、内容により問題になることがある。これらの技術資料も、通産省の許可を要するものが入っていないことを確認する必要がある。最近では、ファクシミリ電送や電子メールなど自由に資料や情報を交換することが多くなっている。これらFAXやEmailで送られる情報の中にも、許可を必要とするものがあるかもしれない。個々に該当するか非該当かを判定しなければならない。
  これらのことは、外国為替及び外国貿易管理法に基づき、輸出の許可など、輸出管理に係る根拠を規定されている。貨物に付いては、輸出貿易管理令、役務に付いては、外国為替管理令で規定される。扱う技術や製品によって対応が大きく異なるが十分研究して法律違反のないようにしなければならない。
法律は、「知らなかった。」ではすまない。ココム規制はなくなったが、問題の可能性はなくなっていないのである。


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