新連載

  その5   " Door is open "


―― "どうぞ!"と言われて入ったが――

アメリカに赴任したばかりの友人が、日本企業の代理店を訪問した時の話である。訪問する前にその代理店の担当者から、今度日本語のわかる女性を雇ったと聞いていたのがいけなかった。まだ慣れない車を運転して、代理店に着いて会社の建物に入った。最も近い事務室のドアの前に立ったら、入り口のドアは開いている。こちら向きに座ってアメリカ人の女性社員が仕事をしている。ドアを小さくノックした。すると "どうぞ!"と答があった。
彼は、てっきり新しく採用した日本語のわかる女性社員と思い込んでしまった。"失礼します。"と中に入り、"どこで日本語を勉強したのですか"と日本語で話をはじめた。そうしたら、けげんそうに、「日本語は理解できない。」と英語でこたえた。つい今しがた"どうぞ!"といったではないか。友人には、確かに、そう聞こえた。

  自分の会社に帰り、アメリカ人の社員にこの話をした。それは、"Door is open."と言ったのだと彼の友人が解説してくれた。"Door is open." ドアズオープン が、"どーぞ"と聞こえたのであった。"ドアは開いてますよ!"と彼女は言ったのであった。

  "Door is open."も"どうぞ"も、彼にとって同じような意味だから救われた。全く異なった意味でであったらどうなっただろうと思ったそうである。私の経験ではないが、英語に慣れないとこんなこともおこるのである。


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