中里さん
イタリア フィレンツエ便り

44
小沢征爾のオペラ
  「利口な女狐の物語」

11月8日(日)
フィレンツエに来る前、村上春樹の新刊「1Q84」を読み終えた。
本の中で主人公が良くヤナーチェクの”シンフォニエッタ”を聞いている。
「ヤナーチェク?」
私にとってはあまり馴染みのない作曲家だ。
確か、オペラ「死者の家」はヤナーチェクだったような気がする、不気味なオペラだった。
今夜はその気になっているヤナーチェク。オペラは「利口な女狐の物語」であった。
指揮は小澤征爾氏。

ところが東京の友人マッキーから、「小沢征爾のオペラ”利口な女狐”がつまらなくなきゃいいけどね。TVで見て途中リタイアしたよ、アハハハ」とメールがきいた。そんなわけで、あまり気乗りせずにコムナーレ劇場に向かった。
館内は少し空席が目立つが、ほぼいっぱい。
2階中央最前席からオーケストラボックスの元気そうな小澤征爾氏が良く見える。
オーケストラの音が響き、舞台では着ぐるみの女狐や動物達が音に合わせて動き回る。
今迄に見たオペラでは、舞台上での歌手にくぎずけになったが、今回はオーケストラの音が主役のようで、音に合わせて舞台が動いて行くように感じた。TVとは違う、生の音は優しく心に響く。

オペラで、こんなにオーケストラボックスを気にした事があっただろうか?
目線も舞台よりオーケストラボックスへ行っていた。主役が着ぐるみを着ているオペラには戸惑ったが、フィナーレでの拍手は凄い!
特に指揮者小澤氏に対するわれんばかりの拍手は同じ日本人として嬉しかった。
日本に帰ったらヤナーチェクの”シンフォニエッタ”は聞くつもりだ。

back