「6シグマ」の本質

 「6シグマ」は、経営トップが経営方針や経営目標を明確にし、各部門に明示し、社員がこれを理解し、共有できることが基本です。その上で各部門は自らの役割、課題を設定し、その解決のために、自由闊達にコミュニケーションを図り、行動できる組織作りを重視します。
 多様な個性を認め、それぞれが適材適所で知力を生み出すことができる問題解決力のある組織環境作りにあっては、経営トップのリーダーシップが不可欠です。当然のことながら、組織や個々人の業績は経営トップによって公正に評価され、賃金や報奨金や昇格面に公平に反映されます。 


「6シグマ」
QCサークルやZDとの根本的違いは?

 日本企業の「QCサークル活動」や「ZD運動」は、製造部門を中心とする組織の末端での活動でした。しかし、「グループ単位で自主的に目標を設定し、課題を設定し、その解決に向って努力をする、メンバーの個性を尊重し、個々人の能力を最大に発揮させる」という点では、「6シグマ」の人間のやる気尊重の運営に通じるものがありました。
 また、「6シグマ」では、問題解決のための手法として「QC手法」や「統計的手法」の活用がありますが、これらの手法は、日本の「QCサークル活動」や「ZD運動」にあっては、自家薬籠中のものとして、自由に使いこなされています。
 
 しかし、「6シグマ」と「QCサークル活動」や「ZD運動」との根本的違いは、経営方針や経営目標を実現するための、経営トップ主導の全社的な問題解決活動であるという点にあります。
 各部門単位で、「チャンピオン、ブラックベルト、グリーンベルト」など役割分担別に責任者が任命され、それぞれに「やる気重視」、「問題解決手法」の教育・訓練が徹底的に行われ、日常の取組みにはすべて権限が移譲されています。業績は定量的に評価され、評価にストレートに反映されます。
 これらは、日本企業のボトムアップを基調とした「QCサークル活動」や「ZD活動」と大きく違うところです。これまでのアメリカ企業に一般的だったマニュアルによる業務命令、指示の経営とも根本的な違いがあります。


「6シグマ」
全社的な「COPQ」極小化のための
組織的問題解決活動

 「6シグマ」では、製造部門の「QCサークル活動」のように作業方法の改善による不良率低減のレベルだけではなく、経営上のすべての部門における広範囲な業務課題が取り上げられます。
 経営全体の各部門の業務が、"Poor Quality"であるために発生する「COPQ:無駄なコスト、機会損失」を極小にするためのすべてが「6シグマ」の活動対象になります。
 従って、管理部門や研究開発からその他間接部門すべてに参加が求められます。日本の「QCサークル活動」では、これらの部門は適当な理由をつけて逃げていましたが、「6シグマ」ではむしろ中心になるべき位置づけにあります。
 「6シグマ」は、経営トップの経営方針や目標の実現のために、各部門単位でリーダーが中心となって「6シグマ手法」を学び、メンバー一人一人の情報ややる気や知恵を重視し、「6シグマ課題」を設定し、その解決に当たります。ここでは一人一人の頭を押さえるのではなく、持てる力を存分に引き出すリーダーシップが問われます。


「6シグマ」の本質は、
企業組織の文化的な体質転換にある

 アメリカの「6シグマ」は、「QCサークル活動」などの運営手法を研究した産物であると言われています。確かに、「6シグマ」には「QCサークル活動」における日本的なマネジメント手法をうまく導入されています。
 手法の中には、「Plan―Do―Check―Action」という管理のサークルをモディファイしたような「M(測定)、A(分析)、I(改善)、C(維持管理)」という4つの基本ステップがあります。
 ここでは、データに基づき論理的に経営目標を実現するための課題を設定させ、知恵を出させ、実践させ、上げた成果については金額換算した上で、公正、公平に業績評価に結び付けるというマネジメントスタイルが貫かれています。
 従って、「6シグマ」は、「人間性を徹底的に尊重する」という基本理念のもと、アメリカの勤労者のマインドにストレートに応えるとともに、特に1970年代までのアメリカの企業に一般的であった「指示命令のもと、マニュアルに従って働く」という「MO的な組織の風土と文化」を根本的に革新しようとするものであった。
 これはまた日本の「和と強調重視のM1型組織」に依存したボトムアップ型マネジメントスタイルをはるかに超える強みを持っているということができると思います。 


アメリカでは
QCサークル活動も「6シグマ」体制で!

  最近、ある日本企業のQCサークル大会に出席し、発表を聞く機会を得た。このQCサークル発表会には、アメリカ工場からの代表も参加していた。「QCサークル活動のレベッルアップのために、6シグマ体制で取組んでいる」との発表があり驚かされた。QCサークル大会での「6シグマ」の登場ははじめてのように思う。
 ブラックベルトの資格を持つグループリーダーの発表であったが、経営全体の方針や目標をもとに、工場としての目標を見直し、DMAICに沿った問題解決手法のトレーニングを実施し、業務の徹底した見直し、改善を行った」という内容であった。
 
 従来のピラミッド型の階級的な組織を、IT時代にふさわしい「ウエイブ組織(Web Organization)」に変更し、メンバー全員が必要な情報を収集し、発信できるようネットワーク作りも行い、最終的には、社外関連企業も巻き込んだサプライチェーンマネジメントに結び付けたいと語っていた。
 アメリカにおいては、「QCサークル」そのものはそう多くないが、「6シグマ体制」で「QCサークル活動」に取り組みという動向は、どんどん進んでいるようである。


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