QCからシックスシグマへ

その3 シックスシグマ活動の本質

シックススグマ活動の基本

 「シックスシグマ」は、経営者が、確かな経営理念を明確にし、従業員に明示することから始まります。従業員は、この経営理念を理解し、共有できることが基本です。従業員は、その上で自らの役割をきっちり理解し、その実現のために、自由闊達にコミュニケーションを図り、行動します。組織は、多様な個性を認め、それぞれが適材適所で知力を生み出し、目標を実現するよう運営されます。当然のことながら、ここでは組織や個々人の業績は公正に評価され、賃金や報奨金や昇格面に公平に反映される仕組みが重視されます。
 QCサークル活動やZD運動も、日本では経営者の理念を正しく理解し、共有した上で、製造部門を中心とする組織の末端で運営されました。「グループメンバーが自主的に目標を設定し、業務を改善し、目標に向って努力をする。個性を尊重し、個人の能力を最大に発揮させる」というシックスシグマ活動の人間性尊重の運営方法も、従来日本企業がそれなりにこなしてきたことであり、特に目新しいことではありません。
 またシックスシグマは、QC手法や統計的手法を使用することを指導しています。QC手法の教育とQC手法を駆使した「シックスシグマ問題解決法」は、論理的且つ実践的で効果的なものですが、この点でも、QCサークルやZD活動で実践されてきたことと変わりがありません。現在日本の企業でもシックスシグマを改めて導入しようとしていますが、基本的な考え方、方法は、すでに日本の企業が従来から持っており、実践してきたものなのです。
 
 しかし、シックスシグマがQCやZD管理活動と根本的に違うのは、経営上のトップ課題としてトップダウンで主導されることにあります。個々の改善課題もプロジェクトとして設定され、チャンピオン、ブラックベルト、グリーンベルトなどの組織的な役割が定められ、、それぞれに対する教育訓練も徹底的に行われます。業績は定量的に評価され、評価にストレートに反映されます。ボトムアップを基調としたQCサークル活動やZD活動と大きく違っています。マニュアルを中心とした業務命令、指示とも根本的な違いがあります。
  さらに、個々のプロジェクト課題も、作業方法の改善による不良率の低減のレベルだけではなく、経営上の要求されるすべての部門にわたる広範囲なテーマを取り上げるという点で大きい違いがあります。経営上、あらゆる業務面で、"Poor Quality"のために発生するコストを削減するすべてをプロジェクトとして取り上げるシステムです。従って、管理部門や間接部門においても、問題を提起して活動することが求められます。日本のQCサークル活動では、管理部門や間接部門が適当な理由をつけて逃げていましたが、シックスシグマでは、本来的に逃げることが出来ないようになっています。
 このシックスシグマ活動の基本は、経営トップの経営理念や方針、考え方を明確にした上で、従業員のやる気や知恵を重視し、徹底的に権限を与えることによって成果を上げていくことにあります。プロジェクト課題をスピーディに確実に解決するためには、リーダーはチームの一人一人の力を結集しなければなりません。頭を押さえるのではなく、持てる力を存分に引き出すリーダーシップが問われます。この点で、シックスシグマの概念は、欧米的な労働者の意識や変化しつつある日本の勤労者意識の変化も合わせて考えると、日本のこれまでのQCサークル活動を遥かに越えたもののように思われます。

シックスシグマ活動の本質は、
企業組織の文化的な体質転換にある

 シックスシグマ活動は、QCサークルなど日本のマネジメントを研究した結果の産物であると言われています。確かに、QCサークルや日本的なマネジメントの運用方法を取り入れ、米国企業にうまく導入できるように設計されています。
 手法の中にPlan―Do―Check―Actionという管理のサークルをモディファイしたような「M(測定)、A(分析)、I(改善)、C(維持管理)」という4つの基本ステップがあります。ここでは、データに基づき論理的に目標や課題を設定させ、知恵を出させ、実践させ、上げた成果については金額換算した上で、公正、公平に業績評価に結び付けるというマネジメントスタイルを貫いています。
 従って、シックスシグマ活動は、「人間性を徹底的に尊重する」という基本理念のもとに、米国の勤労者のマインドにストレートに応えるとともに、特に1970年代までのアメリカの企業に一般的であった「指示命令のもと、マニュアルに従って働く」という組織風土と文化を根本的に革新しようとするものであるという点で、これまでの日本型マネジメントスタイルをはるかに超えた特徴と強みを持っているということができると思います。

 日本ではリストラ旋風が吹きまくり、経費と固定費の削減策が徹底され、年功制も排除され、個人責任による能力主義と成果実績主義が一般化しつつあります。労働集約的な仕事は海外へ移管され、従来のQCサークルを形成していた勤労者層もなくなりつつあります。かつて、製造部門で成功したQCサークル活動も、形骸化してきています。
 こうして、若年層だけでなく中高年齢層にも意識の大きな変化が起こっています。その点では、日本人の勤労者(従業員)の意識も米国の社会に近づいています。よかれ悪しかれ、日本企業の組織内外の環境はアメリカ並になりつつあります。
 そこで大事なことは、こうした状況の中で、「日本の企業は、アメリカを中心とした世界の企業に、品質やコスト面での競争に勝てる力を根底的につけなおすことが迫られている」ということです。日本企業は、1980年代にアメリカ企業に勝利したという成功体験を捨て、再びアメリカに追いつき追い越すために、新たな日本型経営のあり方を探っていかなければなりません。
 そのためには、先ずはアメリカのシックスシグマ活動に学び、その本質を理解することによって、日本型シックスシグマ活動のあり方を早急に実現することです。それはすべての業務の弱点や欠点のために発生するコストを削減するために、経営トップから一般社員まで、組織で働くすべての社員の参加が求められる運動であることは間違いありません。
 戦後、品質管理を学習し、QCサークル活動で華を咲かせようとした日本の企業には、それなりに十分な素地があります。これをいかに生かすか、また、どの部分は否定し大きく飛躍しなければならないかを明確にすることが必要です。シックスシグマという言葉を直接使用するかどうかは別にしても、日本型シックスシグマ活動は、経営者の夢を経営理念とする企業に共鳴し、その理念を共有できる様々な個性や知力を持った人間が結集し、自由闊達に議論し、行動することを通して、目標を設定し、成果を出していくことができる組織体制をつくることが中心になると思います。


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