ZD運動

 「QCサークル」の活動に似た小集団活動として「ZD活動(Zero Defects Campaign)があります。「ZD活動」は、アメリカの企業で開発され、日本のも紹介されました。
 「ZD運動」は、これまでの工場や製造部門の生産ラインに偏りがちであった「QCサークル」の限界を打ち破り、人事部門や経理部門、営業部門など、管理部門や間接部門へも展開しようと意図されたものでした。
 「ZD」は、「従業員一人一人の注意と工夫によって仕事の欠陥をゼロにし、高度の信頼性、より低いコスト、納期厳守により顧客の満足を高めるために、従業員を継続的に動機づける活動」と定義づけられました。
 従来の手法は、「作業標準」、即ち「正しく仕事をする方法」を与えることに主眼がおかれていましたが、「ZD」は、「正しく仕事をする動機を与える」ことをねらいとして導入展開されました。
 一般従業員が与えられた仕事を間違いなく完全に遂行することができるために、管理者層は従業員が正しく仕事をする「方法」を与えると同時に正しく仕事をする「動機」をも与えなければならないとした点に特徴があります。 


3つのミスをなくすために
動機づけを重視したZD運動

 「ZD活動」では、間違いを起さないためには「誤りはなぜ起るのか」を追求し、その誤りの原因を全員で考えて除去することが中心になっています。
 誤りの原因としては、「注意すればなくせるミス」、「技能不足、知識欠如が原因で、訓練、教育でなくせるミス」、「機械や設備、治工具、諸標準など環境改善でなくせるミス」の三つに大別されています。このミスを改善するために、QCサークル活動と同じように統計的手法が使われました。
 
 しかし、一般従業員の業務の質に関する意識を高めるにためには、管理者や監督者の役割が大きな割合いを占めます。そのために、管理、監督者への教育が徹底されました。「ZD活動」では、管理者によってどのように動機付けされ、従業員自身がどれだけ誤りのない仕事をする気持ちになるかどうかが、その成否のわかれ目になりました。

動機付けのために飴を与えた
 日本の一部の企業では、「ZD運動」は「QCサークル」とは異なった展開で、購買部門や経理部門など製造部門以外でも採用され、広く発展するかに見えました。
 課や係組織単位で自主的に目標を設定し、顧客満足に結びつく「Zero Defects」を目指しました。目標を達成すると、達成したグループや個人を表彰して、その成果を称え、ボールペンやペナント、メダルなどの賞品が出されました。
 「QCサークル活動」では、発表会への参加と言う形での報奨でしたが、「ZD活動」では目標を達成すれば賞品がもらえると言うインセンティブが付けられました。動機付けのために賞品という"アメ"が用意されたのです。賞品もボールペンなどの事務用品等から実質的な図書券に変更するなど、「ZD活動」の運営スタッフは目先を変えるために苦労をしました。
 しかし、どのグループでも目標を達成するたびに、次の目標がさらに高くなりその達成も難しくなります。最終的には、欠点0が目標となり、その達成自体が困難になり、次第にその活動も不活発になり、いつのまにか消滅してしまいました。動機付けのために"アメ"を与える方法はやはり長続きしませんでした。現在は、日本でもアメリカでも実施している企業はないようです。


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