読書日記
日本能率協会 人材教育3月号

「シックスシグマ」で身につける
ジャック・ウエルチの「4つのリーダーシップ」

ジャック・ウエルチ
リーダーシップ4つの条件
GEを最強企業に導いた人材輩出の秘密

ダイヤモンド社
著者 ジェフリー・A・クレイムズ
訳者 沢崎冬日

シックスシグマウエイ
実践マニュアル
業務改善プロジェクト成功の全ノウハウ

日本経済新聞社
著者 ピーター・S・パンディ、外2名
監訳 高井紳二


 ジャック・ウエルチは経営トップの強いリーダーシップのもと展開する全社レベルの重点施策を「イニシアティブ」と言っている。彼が率いたGE(ゼネラルモーター社)の「イニシアティブ」の一つが「シックスシグマ」であった。ジャック・ウエルチはこの「シックスシグマ」によって優れた業績を上げ、世界でもっとも評価の高いCEOであると賞賛されることになった。こうしたこともあって、日本でもジャック・ウエルチの経営哲学や手法を紹介する本とともに「シックスシグマ」の手法と実践例を紹介する本が多数出版され、評判をとってきた。多くの企業が「シックスシグマ」を導入し、成果を上げたという話も聞かれるようになっている。
 しかし、「シックスシグマウエイ」という名で紹介された成功のためのノウハウも、現実には、いざ実践となると手法としての曖昧さや複雑さ、難解さに加えて、保守的な組織風土からくる抵抗も大きく、肝心の経営トップのリーダーシップもバックアップも期待できず、頓挫している例も多い。こんなわけで、ジャック・ウエルチが2001年にGEを去って以来、日本ではこの手の話題がいつのまにか下火になってきているように思われてならない。

 こうした中で、このたび出版された「ジャック・ウエルチ リーダーシップ4つの条件」は、装いも新たにジャック・ウエルチのリーダーシップ実践論を紹介した待望の著書ということができる。本著では、ジャック・ウエルチのリーダーシップを4つの「E」で紹介している。すなわち「仕事を成し遂げるEnergy、組織を元気づけるEnergize、ひるまず厳しく決断するEdge、実行し、成果を出すExecute」である。
 ただこの4つの「E」も、普通の読み方をすれば、巷に氾濫するリーダーシップ論のひとつになってしまいかねない。ジャック・ウエルチはかねがね「シックスシグマは過去4半世紀における最大の経営革新の一つであり、最大の効用は優秀なリーダーを育成する力にある」と断言している。そこで私は、この4つの「E」を「シックスシグマ」を成功させるためのリーダーシップ論、シックスシグマへの参画によって身につけることができるリーダーシップ論として読み、理解することをお勧めしたい。

 私が推奨する日本版シックスシグマは、経営課題に対して「問題提起、現状把握、基本課題の設定、最適アプローチ策の設定、実行計画の作成と実行、進捗管理」というプロセスに沿って、BST(ベルヒュードソリューションテクノロジー)という簡便なプログラムを使って取り組む組織的問題解決活動である。ここで紹介するもう一冊の「シックスシグマウエイ 実践マニュアル」では、この問題解決のプロセスを同じように「DMAIC」という5つの段階に分類し、段階ごとに組織としての活動方法と指針を詳細に紹介している。ジャック・ウエルチのリーダーシップの条件である「4つのE」は、まさしく、この組織的な問題解決のプロセスを成功に導くために、特にリーダーに求められる力である。このことは、シックスシグマへの参画を通して「4つのE」に基づいたリーダーシップを身につけることができるようになるということでもある。

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