読書日記
日本能率協会 人材教育11月号
−6シグマをちゃんとやるために−

ウイニング 勝利の経営 

日本経済新聞社
ジャック・ウエルチ、スージー・ウエルチ
斉藤聖美訳

問題解決の思考技術

日経ビジネス人文庫
飯久保廣嗣

上達の法則

PHP新書
岡本浩一

 ジャック・ウエルチが「私のノウハウをすべて教えよう」ということで、奥さんと一緒に『勝利の経営』を書いた。GE(ゼネラル・エレクトリック)を辞めてからエネルギーに満ち、好奇心に溢れ、ガッツと向上心があり、仕事をこよなく愛するたくさんの人々との出会いがあったが、この本は彼らが投げかけてきた質問に応える形で生まれたという。
  私の「日本版シックス・シグマ」は、ジャック・ウエルチの「GE版シックス・シグマ」との出会いで一気に体系化が進んだということもあって、彼があらためて「シックス・シグマ」をどのように評価しているかに関心があり、読んでみた。

 彼は「いまや私はシックス・シグマの大フアンだ。95年にモトローラーからこのアイデアを得て採用したが、事業運営の効率改善、生産性の向上、コスト削減に関して、シックス・シグマに勝るものはない。ちゃんとやれば設計工程を改善し、欠陥の少ない製品を市場に早く送りだし、顧客のロイヤリティを勝ち得ることができる。広く知られていないが、シックス・シグマの最大の効用は優秀なリーダーを育成する力にあると思う。単純に言ってしまえば、シックス・シグマは過去4半世紀における最大の経営革新の一つであり、企業の競争力を高める非常にパワフルなものだ。最近では世界中の企業で採用されるようになってきたが、これを理解しないでいる贅沢は許されない。ましてや実践しないなんてとんでもない」と言っている。
  しかし、「シックス・シグマがそんなにいいものなら、どうしてみんなが不安がったり、混乱したりするんだ。それは最初に紹介された時の方法に問題があったからだと思う。科学者、統計学者、コンサルタントといった専門家がたとえよかれと思っていたとしても、MITの教授しか喜ばないような複雑なパワーポイントを使ってみんなをパニックに陥らせているからだ」とも言っている。

 日本版シックス・シグマでは、経営課題である「6シグマプロジェクト」に対して、BST「Belhyud Solution Technology」という簡便な「問題解決技法」によって組織の力で取り組むことが基本になっているが、『問題解決の思考技術』で紹介されているKT法をベースにした論理的な思考技術も同じ位置づけにある。
 著者は問題解決のための思考業務は段階的に手順に沿って取り組むものであり、「状況分析、トラブルの原因分析、意思決定、実行上のリスク対策」の4つの段階に分類し、それぞれに標準化し、マニアル化した思考技法を用意し、訓練できるようにしている。

 ジャック・ウエルチのいうシックス・シグマの実践とは、とりもなおさずこうした思考技法を身につけ実際的なテーマに応用し、問題を解決することにほかならない。しかし、現実には上達が困難で一朝一夕にはいかない。
 『上達の法則』は記憶と認知の心理学に基づき、仕事でも趣味でも上達は「スキーマとコード化の能力」にあるという理論と上達のための方法論、上級者になるための特訓法まで紹介している。シックス・シグマのための「問題解決技法」に上達し、シックス・シグマの伝道者になるためにも、ヒントが盛り沢山である。

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