読書日記
日本能率協会 人材教育9月号

すごい会議
短期間で会社が劇的に変わる!

大和書房
大橋 禅太郎

りんごは赤じゃない
正しいプライドの育て方

新潮文庫
山本 美芽


 筆者の「日本版6シグマ」は、企業の経営課題である「6シグマプロジェクト」に対して、BST「Belhyud Solution Technology」という問題解決プログラムによって組織の力で取り組むことが基本になっている。
 「組織の力で」ということは、とりもなおさず「会議」が重要な役割を担っているということである。どんな会社でも、社員が主体的に参加し、活発に議論して、確かな結論をスピーディに出し、責任を持って実行し、直ちに素晴らしい成果を生み出すことができる「会議」を、どのようにしたら運営できるか、切実な関心事である。
 日本版6シグマにとっても、当事者意識を持って、主体的に厳しく議論し、目標に挑戦し、確実に成果を出す「真剣でプライドを持った実力ある組織集団」をつくり上げることが不可欠であり、「会議」の開き方、運営の仕方についての工夫は永遠の課題である。

 「すごい会議」は、シリコンバレーでベンチャー企業を起こした著者が、経営が上手くいかず悩んでいた時に、ユダヤ人のハワード・ゴールドマンというマネジメントコーチから指導を受け、画期的な成果を生み出すことにつながった「会議の持ち方」を紹介したものである。
 著者は前書きで「僕のラフな文章にめげず、エッセンスを感じ、ビジネスの現場で活用してほしい」と述べている。確かに「すごい会議」のやり方、手順をマニュアル風にまとめているが、具体的な工夫がどんなすごい成果につながるのか、その理由も含めて記述がラフな感じがする。しかし、「会議で得たい成果を紙に書いて発表してもらう」とか「上手くいかない理由を上げさせるのではなく、どうすれできるようになるかという課題を設定させる」というような具体的な指摘は有効である。
 筆者のBSTプログラムの内容やねらいを理解してもらい、「真剣でプライドを持った実力ある組織集団」になってもらう上でも、率直に言って、大変参考になるヒントが盛りだくさんである。

 「りんごは赤じゃない」は、美術のカリソマ教師「太田恵美子先生」の生徒の成長観に裏づけされた「ものすごい授業の持ち方」を紹介したものである。生徒の学習態度を向上させるためには、教師の命令に服従させることではなく、生徒自身の判断力と自覚を育てることが有効だ。これが先生の試行錯誤を重ねた結論である。
 そのためには、美術教室を花と緑に囲まれた美しい空間にし、生徒達が週に一度でもいいから一流ホテルのようなチリひとつ落ちていない美しい空間に足を踏み入れることで、大切に扱われている、尊重されているという実感が湧くようにして上げたいと言う。
 授業では生徒に見て、感じて、考えさせる。「りんごは赤じゃない」も、体に染みついたりんごは赤という先入観を取り去ると、黄色や緑をはじめ、多彩な色が混じり合っていることが見えてくるというところからきている。
 太田先生はまた、自分の授業にかける気迫に応えてくれたことに感謝を込めて、
@生徒の行動や発言や潜在的な力を見逃さないでほめる。
Aほめる材料は自分で引き出す。
B全員をほめる。
この「3つ」がそろうと、絶大な効果があるという。
率直に学んで実行しなければならないことばかりである。

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