読書日記
−企業と人材−

6シグマ 
Book Guide

  私が最初に手にしたシックスシグマ関連の書籍は、拙著の出版で近づきになった編集者から戴いた『シックスシグマ』(NEC総研、ダイヤモンド社、2400円+税)であった。多分当書は、欧米企業が導入し、高い実績を上げているシックスシグマの概要を日本に最初に紹介したものではないかと思う。その後まもなく続編ともいうべき『シックスシグマ導入戦略』(NEC総研、ダイヤモンド社、2400円+税)が出版された。
 当書ではシックスシグマは経営改革に真正面から取り組むための手法であり、その導入は日本企業に突きつけられた挑戦課題であるとして、日本企業がいかに導入するかについて具体的に述べている。この意味で、上記2冊は、日本におけるシックスシグマ導入の啓蒙書的役割を果たした書籍である。

 「シックスシグマとは何か?」の解釈については、読者によってそれぞれ若干の差があったと思うが、私は「シックスシグマとは、『DMAIC』というプロセスを経て、経営課題を最適の『QCD(品質、コスト、納期)』で解決することを目指す経営革新活動である」と理解した。特に続編において、著者が「シックスシグマのコンセプトは標準でしかなく、これを自社向きにアレンジし、自社にあった形で展開しなければ効果は得られない」と指摘していた点は印象的であった。

 その後、ジャック・ウエルチがシックスシグマをGE社の戦略の中核に採用し、高い実績を上げたということが世界的に喧伝され、GE版シックスシグマアプローチ方法を実践的に解説した書籍も出版されるに至った。その一つがGE社のシックスシグマ研修設計に携わったコンサルタント、ジョージ・エックスによる『シックスシグマ導入プロジェクト』(岩崎尚人・神田良訳、日本能率協会マネジメントセンター、2500円)である。

 この著書を手にしたことを契機に、ジャック・ウエルチの経営の基本的考え方とGE版6シグマの特徴を把握する目的で、ジャック・ウエルチを語る著書を読み漁ることになった。この中で、お勧めは『ウエルチ』(ロバート・スレーター著、宮本喜一訳、日経BP社、2200円+税)と『ウエルチの戦略ノート』(ロバート・スレーター著、宮本喜一訳、日経BP社、2200円+税)である。
 特に、「ウエルチの戦略ノート」の冒頭では、「1970年代、80年代に米国の産業を事実上没落させてしまった戦いの後でき上がった指令統制型の組織構造を葬りさらなければならない。意思決定にかかわるメンバー全員が同一の事実認識を正確に共有できるようにすれば、懸案事項の解決策について、全員がほぼ同じような結論にたどりつく。だからビジネスは単純なのだ」という、ジャック・ウエルチの考え方が紹介されている。これまで「組織のモデル化」と「組織的問題解決技法の体系化」という二つのテーマに取り組んできた私にとって、こうした冒頭の書き出しには、大変新鮮な感動があった。

  ジャック・ウエルチの考え方は、これらの著書を読み進んでいくに従って、社員や組織のあり方を変革する「People Out」と、業務への取り組み方を変革する「Work Out」という2つの基本的な経営方針と施策につながっていることが理解できる。経営トップの理念や方針、価値観を理解し、経営が掲げた課題に対して成果を出すために、自らの意識や行動、業務への取り組み方を革新的に創造する社員を重視した一方で、そうした路線に対応できない、指示命令でしか動かない社員、チェックと管理しかできない幹部社員を排除したといわれる。

  そこで、上記2冊を再度熟読し、シックスシグマに関連する項目や内容を一旦バラバラにして、日本企業の経営革新に有効なシックスシグマというものを構築することを試みることにした。日本企業の実態に即した「People Out」プログラムと「Work Out」プログラムからなる「ソリューションテクノロジー」に裏づけされた「日本版シックスシグマ」の体系化である。日本の企業はグローバルな低価格競争時代にあって、研究、開発、製造、営業のあらゆる面での経営課題を最適の『QCD』で解決できる力をつけていかなければならない。しかし、徒手空拳では無理。武器が必要である。「日本版シックスシグマ」は、そうした武器の裏づけを持った、日本企業の実態にあった経営革新のための組織的な問題解決活動であるということができる。

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