若者が抱く |
会社はこれからどうなるのか |
仕事のなかの曖昧な不安 中央公論新社 |
株価は一万円台に近づいているが、実質経済の回復はほど遠いというのが巷間の評価である。「会社はこれからどうなるか」で、経済学者の著者は「企業の業績不振、忍び寄るリストラの中、サラリーマンは現在働いている会社がこれからどうなるのか、学生は自分たちが将来働くことになる会社はこれからどうなるのか、大いなる不安を抱いているはずだ」として、21世紀会社論を展開している。 現在の日本経済の低迷状態は、従来の「日本型会社会社システム」がアメリカ主導型の「資本主義のグローバル化」、「IT革命」、「金融革命」という三つの局面でミスマッチを起こしているからであるとして、著者は日本のサラリーマンや学生の不安は、「会社は株主のものというアメリカ的な株主主権論の現実的な優位性の前に、従業員の利害を重視する日本型会社システムが敗北し、もはやこの世から消えてしまう運命にあるのではないか」ということに対する不安であるという。 「仕事のなかの曖昧な不安」は、日本型会社システムがポスト資本主義時代への対応に苦しみ、ミスマッチを繰り返す中で、中高年層従業員があるいはそ以上に若年層の従業員が抱え込まざるを得ない深刻な失業の問題、働くことへの不安の問題を考える上で実証的なヒントを与えてくれる著書である。 この本では「若年」は十代から三十代前半までとしているが、著者は若年の雇用の現状を危惧する声は中高年についてのものに比べてはるかに少ないことを憂慮している。それは中高年の場合の多くが会社都合による非自発的失業であることに対して、若年の場合の多くが自発的失業であるという理由からであろう。しかし、なぜ若者が仕事を辞めていくのか、その本質的な理由をさかのぼって考えてみる必要がある。 日本経済がこのまま没落してしまっていいのか。それは、日本の会社がいかにあるべきか、若者は会社の中でいかに働くべきか、あるいは日本の社会がリスクをとって自ら会社をおこす気概を持った若者をいかに輩出させていくかにかかっている。この二つの著書から、日本の会社や社会のポスト資本主義時代における課題を読み取ることができる。 |