読書日記
  
3強から学ぶ
企業の自己革新成功の鍵

日本能率協会 
人材教育 平成14年11月号  

GEとともに ウエルチ経営の21年 アニュアルレポート1980−2000
 ダイヤモンド社
 GEコーポレート・エグゼクティヴブ・オフィス
ソニー燃ゆ
 集英社文庫
 城島明彦
トヨタはどこまで強いのか
 日経BP社
 日経ビジネス編集部  


 この日曜日の朝、「究極のデフレ対策」というテレビ討論番組があった。話題は不良債権処理問題に終始し、これといった新味は感じられなかっが、討論の過程で経済担当大臣から「貸し手、借り手の銀行と企業が本気で構造改革に取り組まない限り、公的資金投入も効果が期待できない」という趣旨の発言があり、少しは救われた気がした。

 80年代に入って、アメリカの企業は海外の競争相手から激しい攻勢にさらされ、さまざまな業種で生産性は低下を続け、多くの工業製品の主導権が他国の手に渡りつつあった。「GEとともに」は、こうした中で、GEが「自己革新を怠り、古きを廃して新きを導入し得ない企業は深刻な衰退の道をたどることになる」という認識のもと、ウエルチのトップリーダーシップのもと、この20年間に取り組んだ自己革新の経緯をまとめた「アニュアルレポート」である。「事業、意識、組織、業務推進」に関わる一連の構造改革は、やがて、ウエルチによって、顧客に関わるすべての製品とサービスの品質をほぼ完全なものにするための「GE版6シグマウエイ」としてオーソライズされるに至った。

「ソニー」は、ボトムアップ型経営が中心の日本にあって、強力で多才な経営トップを擁し、自己革新を続けてきた数少ない企業である。「ソニー燃ゆ」は、ハードとコンテンツビジネスのシナジー効果の発揮によって、世界の総合エンターティメント企業をめざすという、これまでのソニーの進化のプロセスを主に経営トップのリーダーシップの視点から大河ドラマ的にまとめた労作である。この部分には触れられていないが、ソニーも、6年ほど前に6シグマを導入したが、成果は必ずしも芳しくなかった。業を煮やした当時の出井社長は、ウエルチに「6シグマの何がいいのか」と質問したところ、彼は「GEも最初は上手くいかなかった」と答えたと言う。そこで、出井社長は「GEのように効果を出せるか検証せよ」と指示し、その結果、ソニーは直輸入した「6シグマ」を自社体質にあうよう仕組みを変えて、「ソニーシックスシグマ(SSS)」として再スタートさせている。

「トヨタ」は日本型経営の最後の砦と言われる。確かに、不況が続く中、連結決算1兆円を達成し、勝ち組の座を確固たるものにしている。「トヨタはどこまで強いのか」は、この時代に流されないトヨタの強さの秘密を解剖できれば、日本企業復活の糸口もつかめるとして、経営陣や現場にインタービユーし、「人を財産としてとらえ、能力を最大限高め、引き出す」という経営理念に裏づけされた「トヨタ6シグマウエイ」ともいうべき、「お客様第一主義、高い品質、合理的生産方式を追求する問題解決型組織づくり」こそがトヨタの強さの源泉であると言い切っている。


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