読書日記
  
 「最強の社員」をつくるためには
「組織の法則」を知らなければならない。

日本能率協会 
人材教育 平成14年6月号  

ペンギンの国のクジャク 扶桑社 BJギャラガー&ウオレン・H・シュミット
困った組織と、どうつきあうか ダイヤモンド社 井上 仁
トヨタはいかにして「最強の社員」をつくったか 詳伝社 片山 修 
  

  研究会メンバーのKさんから「我々の研究会の活動テーマに大変近い内容の本が見つかった」という電話があった。「組織と個人を生き返らせるビジネス寓話!」というサブタイトルの「ペンギンの国のクジャク」である。堅苦しくて官僚的なペンギンの国にやってきたクジャクのジャックは、最初は才気煥発さを認められるが、規則やタテマエに縛られ、冒険やリスクを恐れる長老達の抵抗にあって、画期的なアイデアややる気をそがれてしまうという寓話である。これはトップや上司の指示命令や、規則やタテマエを守ってみんなと歩調をあわせていれば、快適で安全であるという世界で、個性的かつ創造的に生きることの危険性と可能性について述べた物語である。

 著者は世界中の国の人々に語りかける物語だと言うが、「日本はもっともペンギン的な国。保守的で、勤勉で、意見の一致、世間体、助け合いがものをいう、個人より集団の利益を大事にする国。日本はこうした価値観を持って戦後経済大国としての地位を築き、世界の賞賛を集めた。ペンギンたちは鼻高々であった。しかし、新しい世紀に突入し、これまでの実績はあてにならなくなってきた。日本のペンギン達は混乱し、苦闘している。クジャクをはじめ毛色の変わった鳥たちが既存の秩序に反旗を翻しているからである」と指摘している。
 拙著「困った組織と、どうつきあうか」では、「組織は内外の環境変改に対応して進化する」という仮説のもとに、「組織と個人の関係」を「3つのモデル」に類型化した。第1はトップや上司の指示命令で動く「M0型組織」、第2は規則やタテマエを主体的に遵守する和と協調重視の「M1型組織」、第3はそれぞれが良さを認め合い、信頼しあい、適材適所でがんばる問題解決力ある「M5型組織」。「M1型組織」はペンギンの国そのものである。組織のタテマエや規則よりも「好き嫌い」や「羞恥心」や「使命感」を優先させて生きるワシやタカやハクチョウやクジャク等の登場で求心力を失っている。しかし、彼らが主役の「M5型組織」への道は遠い。
 一方トヨタは来年3月の連結経常利益「1兆円突破」が確実視される日本最強の企業である。「トヨタはいかにして最強の社員をつくったか」では、著者はトヨタの強さの理由は、企業にとって最大の経営資源「人」にあるとして、これまでのペンギン国の「M0型、M1型組織」の論理から脱却し、自発的なモチベーショによって働く、自立した個人「クジャクのジャック」達の働きを評価する「M5型組織」を構築したプロセスとその現状について述べている。3点セットでの読書をおすすめしたい。


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