日本版6シグマ的問題解決とTQC的問題解決の相違
−日本版6シグマの本質を探る−

層別の相違
 TQCでは、まずデータにいろいろな条件のものが混在していないかどうかを確認する。混在していればまず層別する。データは、層別してからでないとと原因分析に入らない。層別してデータを整理したうえで件数の多い、重要なものから順番に取り上げて問題解決に入る。
日本版6シグマ的問題解決でも層別をするが、少し趣が異なる。機械別とかライン別という層別ではなく、原因となる本質を探るための層別である。従って、「本質に迫る層別」とか、「フレーム枠的な層別」と言ったほうが良いかもしれない。

TQC的な層別では、同じラインで生産された製品でも、モデルごとに層別した上で詳細な分析検討に入る。日本版6シグマ的層別では、同じラインで製造された製品のデータであれば、異なったモデルのデータが混在しても同じように扱う。
「組み立て配線不良」の例で見れば、不良発生のデータから、「作業管理の不徹底」、さらに「作業者のミスで発生する不良」、「作業支持票の不備で発生する不良」、「治工具の管理不十分で発生する不良」などが層別項目となる。さらに、「工程内検査基準の不十分で発生する不良」があげられ、「外観検査判定基準の不備」、「色見本の管理不十分で発生する不良」などが層別の項目となる。従って、最初から同じ製造ラインで生産されるすべての機種に共通に使用できる。

TQC的な問題解決でも、原因追求の段階で「作業管理の不徹底」や「作業者の教育訓練不十分」などが出てくる。設計問題がクローズアップされることもある。しかし、TQC的問題解決では、不良項目件数が大きい順番に検討されるので、モグラ叩き的な解決になる場合があり、この様な本質的な問題が後に回されたり、件数が少ない場合は、無視されることもある。
日本版6シグマ的解決では、提示された意見や項目のデータは、件数に無関係に1つとして扱われ、これらのデータを良く見ることによって本質的な問題を発見する手がかりとして、尊重される。特に、市場の声(VOC)の分析ではその効果が大きい。TQC的問題解決では、ある1モデルで問題が解決し、終了すると次のモデルで同じように検討に入る。部分最適の問題解決を積み重ねて全体に迫ってゆくが、日本版6シグマ的問題解決では、最初からすべての機種を対象とした全体最適を狙うのである。

日本版6シグマ的層別例
組み立て配線工程。
工程や各種モデルのデータが混在しても共通に使用できる層別

日本版6シグマ的問題解決で実際に適用され、その層別として使用された実例をいくつか上げる。

部品不良
部品加工工程の管理不徹底
・加工工程の事前チェックが不十分で発生している不良
・作業者の熟練不足で発生している不良
・作業者の不注意で発生する不良

部品の調達管理不十分
・受け入れ検査が不十分なために発生した不良
・部品の仕様が不十分で発生する不良

組み立て配線不良
作業管理の不徹底
・作業者のミスで発生する不良
・作業指示表(作業標準書)の不備で発生する不良
・冶工具の管理不十分で発生する不良

工程内検査基準の不十分で発生する不良
・外観検査判定基準の不備
・色見本の管理不十分で発生する不良

出荷検査
出荷検査基準の未確立
・ユーザーの受け入れ検査基準が不明確で発生する不良

出荷基準の変更
・出荷検査基準の連絡不備

設計の問題
外部ストレス安全基準の未確立(例)
・電源電圧変動に関する基準の不備
・雷電圧対策の情報不十分
・静電気対策不十分
・異常電波に対する予防対策の不備

部品情報収集不備による
・部品ロット間バラツキ情報
・経年変化の情報収集不足

実験不足による回路の安定度未確認
・高い周波数での発振現象
・低電圧での動作停止

TQC的層別例
すでに相当使用され効果を上げているので層別の基本的な項目を例としてあげる。
時間別
機械・設備別
担当者別
地理別、産地別
環境や雰囲気別
商品別
顧客別

 この様に並べてみると日本版6シグマの層別も、TQCの層別も品質問題解決では、よく使用されている層別や原因として上げられる項目のように見える。TQCでは現場の作業者たちが、「QCの7つ道具」を使用して、工程の不良問題を次々と解決し、その効果をQCサークル大会などで発表してきた実績もある。TQC的問題解決は、日本の製品の品質を大変高めてきた実績もあり、有効である。
しかし、前にも記したように現在発生している問題は、それほど簡単ではなくなっている。また、製造部門以外の事務部門や管理部門ではこのTQC手法を使われることは少なかった。日本版6シグマ的問題解決は、製造部門だけでなく、従来使われなかった事務部門や管理部門、設計開発に対応できる手法である。

しかし、提示されたVOCやCTQ(問題点)をきっちり読み取り、グループ化し、各グループに表札をつけ、空間配置(インデックス図解化)を作成して問題の本質を明確にする「日本版6シグマツール」を使いこなすには、セミエグザクトサイエンス(Semi−Exact Science)情報処理に関する知識と少しの訓練と体験が必要であることを付け加えておく。

ボトムアップとトップダウンの相違

変わってきた問題の質
QCサークル活動は、その成立過程からしてもボトムアップである。最初にQC手法を学習した、製造部門の組長や班長クラスがその使い方を作業員全員に指導して自分たちで工程の問題を検討し、改善を進めてきた。全国のQCサークル大会に参加して、自分たちも同じようにやってみたいと言い出したのは、作業者たちであった。問題を発見し、原因を追究し解決してきた。新入社員に未熟さが見つかれば丁寧に指導をし、作業のしにくいところがあれば改善提案をして、作業指導書を改定させてきた。さらに、技術部門の問題を発見すれば上司を通して、改善提案もどんどん進めた。
欧米では、改善に関する仕事は、技術者としての仕事とされてきたが日本では作業者がこれを行った。最初にこれらのQCサークル発表を見たジュラン博士は、「その仕事の内容やレベルの高さに驚かされた」と専門誌に談話を発表されたほどである。比較的教育レベルの高かった作業者が「QCの7つ道具」をマスターし、この知識を生かし、これを使って自分たちの業務を改善することに喜びを感じていたのである。

 しかし、現在の発生するいろいろな問題の質は、従来と変わってきている。前にも述べたように組み立て製造ラインでは、自動化や機械化が進み、作業者に頼る部分は非常に少なくなっている。現存する作業者に依存する組み立てや半田付けの作業工程では、従来のTQC的な問題解決方法を使用すればよい。作業工程での問題の原因究明と対策はできる。現在では、機械化や自動化された工程に関する知識を得て、そこで発生する問題さえ解決できるレベルをもつ工程や作業者さえ出てきている。この製造ラインで発生する問題から、経営や企画、設計段階による問題まで言及することには無理と限界がある。

経営者層が決断する
手法をマスターしておしまいではない。TQCでは、「QCの7つ道具」を学習し、現場の問題点に当てはめてみて解決に導いて、それなりの成果に結びつけた。しかし、日本版6シグマの手法をただ学習しただけでは効果は出ない。経営幹部層(チャンピオン)が、企業や事業部の問題を的確に把握し、SSPとして解決すべき課題を理解し、承認し、グループリーダー(マスターブラックベルト)に権限委譲(Empowerment)するというプロセスに責任を負わなければならない。VOCを整理し、CTQを明確にし、SSPを提案するまでは、担当者にやらせればよい。しかし、提案されたSSPを承認することは経営者層の責任である。SSPの最適案を達成すれば、目的が達成されるかどうかを見定めなければならない。

例を上げれば、「製品の占有率を2倍にする」とか「製造コストを10%削減する」とか目標を決定するのは経営幹部層(チャンピオン)である。決断するのである。承認した案が実践されて効果が出なければ承認した経営幹部層が責任を持たなければならない。この自覚が必要で大切なのである。報告を聞いて「それではやってみなさい」程度の認識ではなく、きっちり解決までやらせることが必要である。
提案されたSSPを承認することは、「コストを10%削減」すれば、本当に販売目標が達成でき、経営目標の実現につながる」ということに確信を持つからである。10%削減できて実際に経営目標が達成できなければ、その責任は経営者にある。「本当に10%でよいのか、30%とか、コストを2分の1にしなければ達成できないことはないのか。」を自問自答し、結論を出さなければならない。

 欧米の経営は、トップダウンであるといわれる。経営者層のスタッフが常に研究し、経営ポリシーを明確にしてトップダウンで下に下ろす。その経営ポリシーが成果を上げることができなければ、経営者交代である。しかし、日本の企業では、企業の文化や伝統、習慣がありそのまま実践することは難しい。
日本版6シグマでは、これを考慮してまず現在の問題点を担当者レベルで「W型問題解決フロー」に従って、問題を提起し、現状把握をし、最適案を策定するところまで行う。この段階までは、従来のQCサークルによる小集団活動的アプローチを事務部門や管理部門、設計部門に拡大したものである。CTQに関係する担当者が参加して提案を作成すればよい。提案された「最適案」と「行動計画」について承認するどうかは、経営者層(トップ)の決断によって決まる。承認した場合は、その実践はプロジェクトリーダーに全面的に任される。これが日本版6シグマのトップダウン的実践である。


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