目標管理と6シグマ

−ボトムアップでは企業目標実現が難しい− 


企業目標の実現に結び付かなかった一例

  営業部門の販売金額は、数値で測定できる典型的な目標のひとつである。ある会社で、営業部門の目標に定めた売上高を100%達成しながら、目標とした利益が出ないという事態が発生した。販売していた主要な製品のしかるべき利益が確保されていなかったためである。その元をたどってゆくと、その理由は資材調達部門がその製品の原料や材料の調達費用のコストダウン目標を達成していないこと、そして、製造部門で不良が多発し、予定以上に工数が掛かってしまったことにあった。
 営業部門が設定した販売価格に対して、実際に調達された原材料の費用のコストダウンが追いつかなかったのである。製造部門では、設計上の構造的欠陥で歩留まりが予想以上に悪かった。そのために、残業時間で納期はカバーできたものの製造工数が異常に多くなってしまい、製品の利益が確保できなかったのである。

 資材調達部門は、原材料のコストダウンと違った目標を設定していた。それにはそれなりの言い分があった。新製品開発の際に設計部門が、資材調達部門の推薦する部品やメーカーの部品を採用しなかったというのである。調達先の製造力、技術力、コスト力を最も良く把握しているのは資材部門である。資材調達部門の権限が弱く、調達先の選定を押し切れなかったのが問題であった。
 コストの削減は、単なる交渉力のみではない。調達先の総合力を把握して、製造方法、原材料の調達など指導しながら、合理的な購入価格を設定し、その後の改善方法も考えてコストダウンを進めなければならない。推薦するメーカーの原材料を採用しないとコストダウンの協力が得られない。しかし、資材調達部門は、現在の社内の力関係では、原料調達先の選定を押し切れないことがはじめからわかっていたので、原料調達コストダウンという目標を設定しなかったのであった。

 結局、部門相互の連絡調整不十分なことが影響した。市場の価格の動向を見ながら、営業部門が販売価格を設定する。原価を考慮せずに一方的に販売価格を安く設定すれば利益はでないのは当然である。販売価格を大幅に安く設定しないと完売できない状況の時には、営業部門は、市場の正しい状況を伝えて、原材料の調達価格だけでなく、製造のコストまで含めた総合的な調整をして、関連部門に、万全の協力依頼を行うべきである。そうした情報を、営業部門は調達部門へ早目に流し、同時に営業部門が行う努力についても事前に説明しておく必要がある。市場の価格動向の情報だけで営業努力を説明なしでは関連部門の協力は得られない。
 このようにステップを追って見てみると、企業としての最適目標の設定には、各部門の利害関係が複雑に絡んでいることがわかる。部とか課のレベルで適当に決めた目標では、それぞれの目標を達成できても、企業としての目標は達成できないこともある。各部門が的確な目標を設定すると共に、関連部門に要請すべきことを明確にし、それぞれの目標を確認しあい、補完しあわなければならない。この意味で、現在は従来のようにボトムアップでは、解決が難しい問題が山積している時代だということができる。

全体最適をどう達成するか

 本来企業の経営活動では、各部門の目標が全て達成できれば、企業全体の目標も達成されるようになっていることが好ましい。ただ、関連部門に協力してもらわないと自部門の目標が達成できない部門もあるし、関連部門が補完しあわないと、全体として目標を達成できないという場合もある。
 従って、各部門の活動のベクトルをきっちりと合致させ、補完すべきところは補完しあって、各部門の達成目標の集大成が企業の最終目標達成につながるようにしていかなければならない。この意味で、各部門の目標は、関連部門の実情を十分理解した上で、全社的な視点から合理的に決められるようにしなければならない。

 確かに、各部門の要求を相互に調整することは大変のようにみえる。しかし、企業にあっては新製品開発から、製造販売まで一緒に検討してきた土壌がある。営業部門も設計部門も、工場部門もはじめての付き合いではない。また、長い間にわたって培われてきた情報交換システムも、人間関係もある。お互いに協力し、理解しあってきた仲である筈だ。例えば、営業部門が調達部門や製造部門の能力を正しく把握した上で、市場の1年先、2年先の動向やトレンドを早目にタイミング良く提供し、協力を依頼することは、その気になりさえすれば、そんなに難しいことではないと思う。
 しかし、確かに大きな目標を達成しようとすると、どこかに手の打ちようがない困難な部分が存在しているものである。それが普通である。このような時は、どの部門がどのように協力し補完しあって、全体最適をどう達成するかについて、ボトムアップではなく、トップダウンによる問題提起が決め手になるということだけは確かだと思う。


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