目標管理
全体最適の視点から!

  営業部門の販売金額は、数値で測定できる典型的な目標のひとつである。ある会社で、営業部門の目標に定めた売上高を100%達成しながら、目標とした利益が出ないという事態が発生した。販売していた主要な製品のしかるべき利益が確保されていなかったためである。
 その元をたどってゆくと、理由は資材部門がその製品の部品調達費用のコストダウン目標を達成していないこと、製造部門で不良が多発し、予定以上に工数が掛かってしまったことにあった。


目標管理も
経営目標実現に直結していなくては!
  資材部門は、購入部品のコストダウンという目標を設定していなかった。新製品開発の際に設計部門が、資材部門が推薦するメーカーの部品を採用していなかったからである。調達先の製造力、技術力、コスト力を最も良く把握しているのは資材部門であるが、資材部門の権限が弱く、調達先の選定を押し切れなかったのである。
 製造部門では、設計上の欠陥から歩留まりが予想以上に悪かった。そのため残業時間で納期はカバーできたものの製造工数が異常にかかってしまい、目標コストが達成できなかったのである。
 
 結局、部門相互間の連絡調整不十分なことが影響した。市場の価格動向を見ながら、営業部門が販売価格を設定する。販売価格を大幅に安く設定しないと完売できない状況の時には、営業部門は、市場の状況を伝えて、部品の調達価格だけでなく、製造のコストまで含めた総合的な調整をして、関連部門に、万全の協力依頼を行うべきである。
 企業としての最適目標の設定には、各部門の利害関係が複雑に絡んでいることがわかる。部とか課とかあるいは個人のレベルで決めた目標では、それぞれ達成できても、企業としての目標は達成できないこともあるわけである。


目標管理の全体最適化を
どう達成するか
 目標管理にあって、各部門の目標が的確に設定され、達成できていれば、その結果として、企業全体の目標も達成されることになっていることが好ましいのではないだろうか。
 そのためには、各部門が連携し、あくまでも経営目標の実現につながる「目標管理」が前提であるべきである。各部門の目標管理の集大成が会社全体の目標達成につながるようする、」即ち「目標管理」の全体最適化である。

目標管理を「日本版6シグマ」へ
どう発展させるか
 確かに、各部門が自らの目標を相互に調整することは大変のようにみえる。しかし、「和と強調」の日本企業には、新製品開発から、製造販売まで一緒に検討してきた土壌がある。営業部門も設計部門も、工場部門もはじめての付き合いではない。また、長い間にわたって培われてきた情報交換システムも、人間関係もある。お互いに協力し、理解しあってきた仲である筈だ。
 例えば、営業部門が調達部門や製造部門の能力を正しく把握した上で、市場の1年先、2年先の動向やトレンドを早目にタイミング良く提供し、協力を依頼することは、その気になりさえすれば、そんなに難しいことではないと思う。
 しかし、確かに大きな目標を達成しようとすると、どこかに手の打ちようがない困難な部分が存在しているものである。それが普通である。求められるのは、部門がこの「目標管理」でどのように協力し、補完しあって、経営目標達成という、全体最適をどう達成するかである。
 ここには、「目標管理」をトップダウンのリーダーシップのもと、現場の各部門が一体となってボトムアップ力を発揮する「日本版6シグマ」的な問題解決活動へどう発展させるかという課題がある。


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