その115
ミヤンマー便り (9)

政府系持ち株会社
Union of Myanmar Economic Holding Limited
訪問


 日系企業が苦労している陰で毎年取引金額を伸ばしている現地企業がある。閉鎖的なミャンマーにおいて当然と言えば当然であるがその一つを紹介する。この会社は政府と退役軍人及び関係組合が出資する持ち株会社である。事業企画担当副社長の話によれば、製造業からサービス業まであらゆる分野にわたっている。この会社は政府の資本が大きいので、ミャンマー連邦のためにという明確な目的と方針を持つ。軍事政権のもと当然といえば当然である。
 製造業には縫製、ビール、木材、宝石、タバコ、ゴムなどがあり、サービス業では、観光事業として2つのホテル及びゴルフ場も経営する。食料関係の工場では、そばやラーメンも作る。貿易の面では、この国の必需品、例えば、燃料、建設機械、自動車を輸入する。自動車は、2000〜3,000台輸入し、ヤンゴン市内で700台の自動車を持って運送会社も経営する。日本からの中古バススの輸入ではそのシェアの70%を占める。
 更に、銀行にも投資をしており、この銀行はミャンマーの企業のベストスリーに名を連ねる。最近の動きとしては、日本、韓国、ドイツ、タイ、シンガポールと合弁事業を検討している。ホテル事業ではマカオと合弁で開始したが、現在はすべての株を買い取り、この持株会社100%資本の会社になった。また、別の件でも香港や中国とも合弁企業の話を進めており、その中のセメント工場2つは中国技術で建設しているとのことである。

 このように政府系持ち株会社は、政府との強いつながりを持ち、製造、貿易、サービス、観光などあらゆる事業が自由にでき、また輸出入などに大きな権限を持っている。海外企業との合弁に関する話なども、各会社のトップは政権上層部といつも会うことができるので結論が早い。会社の説明の締めくくりとして「これらの事業に興味があれば、Eメールでも手紙でも何でもよいのでコンタクトして欲しい」と大変自信のある話であった。
 ミャンマーにおけるビジネス成功の鍵は、それぞれの分野の国営企業との協力にありそうである。逆によほどの政治的なコネクションがない限り、民間企業はミャンマーへ進出しても当面の間成功は難しい。すべて政府の一部の企業に輸入権も輸出権も握られ、自由になる余地は現在のところないからである。もちろん、表面的には制限をしていることになっていないが、実際の取引ができない構造になっている。原因は、欧米諸国のミャンマー軍事政権への経済制裁にあるともいえるが、ミャンマーへの進出についてはしばらく様子を見るのが企業としては賢明であろう。

 しかし、現在のような状況は長くは続くことはないと思われる。また、続けられてもミャンマーの国民も困るだろう。欧米諸国の経済制裁の中でミャンマー軍事政権は解決の落としどころを探しているのではないだろうか。1日も早く世界各国と正常な関係を保つことができるよう改善して欲しいものである。

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