その109
ミヤンマー便り (3)
第一印象

  朝10時45分成田空港からタイ国際航空で出発し、バンコックで乗り継ぎ、夕刻7時過ぎのヤンゴン空港到着であった。普通、空港が近づくにつれ、無数の明るい照明や道路を走る車のヘッドライトの帯が見え、首都が近づいたことがわかる。しかし、ヤンゴンではその明るい照明やヘッドライトの帯も見えなかった。空港には我々の乗ってきたもの以外の航空機は僅か2機しかなく、数少ない暗い電球の照明だけであった。これが国際空港かなという感じであった。

  空港建物の中も照明は少ない。薄暗い中での入国審査はやけに時間がかかる。入国手続きは、係官4人でやってくれるが遅々として進まない。ボーイング777で300人もの入国者があると1時間以上かかるのが普通だそうである。やっと入国審査が終わり、バッゲージクレイムに行っても預けた荷物が出ていない。全員の荷物が出てきて空港の外へ出るまで2時間以上たっていた。大変な国へ来たのだという印象である。

  空港の外へ出てみたが、ここも照明用の明かりは少ない。たいていの国の首都空港では、見栄を張っているかのように照明を明るくし、派手な広告塔や大きな看板などがあるものだ。しかし、空港ビルの外には、うす暗い中に車が十数台とバスがあるだけで、日本の片田舎の無人停車場という感じであった。これが第一印象である。

  ところが日中のヤンゴン市内の印象はがらりと変わった。燦々と輝く太陽のもと、町の中心街まで緑がいっぱいでよく手入れされ管理されている。気温が高く、雨季もあり、植物にとって最高の気候なので成長も早いと聞く。我々が実際に見ることができたのは、市の中心部のメインストリートと大きなマーケットの近辺だけであったが、美しく清掃され手入れされていた。よく開発途上国に見られるような雑然とした感じや特有の臭いもない。これはミャンマー人の民族性をよく表しているのではないかと思った。

  また、軍事政権と聞いていたので、空港から町の官公庁施設まで多くの軍人が見張り、観光客も勝手に移動することは許されないのではないかと予想していた。しかし、全くそのようなことはない。町の中でも軍人はほとんど見られない。ただ、スー・チー女史の自宅は、滞在するホテルから近いところにあると聞いたが、その付近には観光客も近づけないとのことであった。

  軍事政権を意識させられたのは、現ミャンマー政権VIPの娘さんの結婚式であった。その結婚式は日曜日に滞在するホテルで行われた。ホテルの中はもちろんのこと周辺道路の警戒も物々しく、この日だけは朝から一般の車の出入りは制限されていた。ホテルの駐車場は軍の関係者の自動車で占められており、銃を持った軍人が多数ホテルの中や大通りまで警戒していた。チャーターしたバスも迎えに入れずに我々が大通りまで歩かなければならなかった。しかし、我々がホテルに帰ったときにはいつもの平穏さに戻っていた。このとき以外は、町の中は平和で、穏やかで軍事政権下とは思えないほどであった。

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