その108
ミヤンマー便り (2)
産業について

 国内産業の構成は、第一次産業が約57%、第二次産業が約10%、第三次産業が約32%であり、農業だけで全体の49%と約半分を占める。国有企業の不振、徴税ノウハウの欠如、民間業者の脱税などが理由で、財政収入は赤字といわれる。外貨準備高は公表されていないが、これも赤字といわれる。外貨については、ミャンマー国民はUSドルの現金を持つことは許されていないが、現実はマーケットでもドルが流通する。なんとも規制と現実の大きな違いを見せられる国である。

 2003年2月に銀行の取り付け騒ぎがあってから、ミャンマーにおける銀行の機能が麻痺状態にある。中央銀行は、1週間あたりの預金の引き出し額を上限50万チャットに制限したが、現実には各銀行共に10〜20万チャットの引き出しにしか応じていないし、まだこの傾向は継続している。

 輸出はタイ向けの天然ガスが全輸出額の3分の一くらいを占めている。このほかの輸出品目は、チーク材、水産物(エビ)や豆類である。最近アパレル縫製品が増えている。輸出国は、タイ、インド、米国、中国、シンガポールなど 日本は輸入額で7位に位置する。ゴマやチーク材の輸出規制、国外への利益送金の制限(毎月MAX1万ドル)、原則輸出で得た外貨のみ、輸入が可能である。輸出は、1回ごとの商務省への輸出手続の必要といわれるが、現実には政府トップの許可が必要である。更にFOB価格の10%の輸出税が課せられる。このような事情で輸出環境はどんどん厳しくなっている。

 輸入品目は、機械、建設機材である。食用油、ミルクなど食品、セメント、肥料、紙類も主な輸入品である。日用品をシンガポールから、原油、食用油をマレーシア、機械類を日本から輸入している。輸入代替品を生産する企業は、トタン屋根に使用する亜鉛鉄板など原材料の調達も困難になっている。従って、輸入するために採算を無視して輸出をする側面がある。

 政府は、外貨節約を目的とした輸入代替生産を国有企業に任せる傾向が強くなっており、国営セクターが前年比2倍以上に増やしている。これに伴い、民間セクターは減少、低減傾向にある。設備や生産材料など資本財、中間財に輸入が増加しているが、これも国有企業が主体である。国有企業の生産品目は内需の大きい食品や日用品で新しい工場建設に力を入れている。このためにインドや中国が低利の融資をしている。

 このような傾向から、外国投資はほとんどない状態になってしまっている。1990年当時のベトナムと比較では50:50位であったが、現在では、1:100位に減少している。勤勉で低廉な労働力が豊富でありながら、ミャンマーへの企業進出は少ない。原因は、国内優先の政策にあり、原料輸入などに制限があることや、海外への利益送金の制限、輸出優先主義 輸入税の不明瞭などで法人収入がなかなか確定しないことにある。更に輸出で得た外貨に対しての悪い交換レート(1USドル450チャット)を義務付けているため、民間企業の貿易は実質上成り立たない状況にあると言ってよい。

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