その105
MM2100工業団地
2つの日系企業訪問記

MM2100工業団地は、ジャカルタ市の中心から約30km、ジャカルタ−チカンペック高速道路を車で30分ほどのところにある。1990年に日本資本(丸紅)60%、現地資本40%で設立され、すでに約130社が入居し操業している。日系企業も70社ほど進出して稼動している。スカルノハッタ国際空港からも1時間で行くことができ、便利なところに位置している。
政治的に不安、治安が悪い、原材料の調達が困難というデメリットに加えて、インドネシアルピアの為替変動、労働問題、賃金の上昇など、これからの工場の操業を考えた場合不安材料は多いが、労働者の賃金の安さ、労働力の質の良さ、操業費用や将来の市場規模に期待できるメリット等から、日本からインドネシアに進出する企業は増えている。
この工業団地の利点は、生産物流の拠点として恵まれていることである。専用の高速道路のインターチェンジを持ち、輸送や通勤に便利である。電力供給、豊富な工業用水、廃水処理など充実したインフラを持っている。工業団地内には、ショッピングセンター、日本食レストランがあること等は、日系企業にとっても安心できる要素である。更に日本商社丸紅の管理下にあり、日本人が常駐しており、交渉やその後のメンテナンスについても信頼が置ける点も有利である。

今回、この工業団地にある日系企業を2社訪問した。

ICHIKOH INDONESIA
市光工業インドネシア
ジャカルタの工業団地MM2100にある、1997年設立された自動車用のヘッドライト、ミラーなどの自動車用部品を製造する会社である。資本金は、1400万USドル(17億円)で、日本の市光工業株式会社が70%、現地資本30%の合弁企業である。従業員は、約270名で日本人スタッフ5名、CEVEST卒業生5名で構成されている。日本人スタッフは、大体3年ほどで交替するようにしている。製品の納入先は、トヨタ他日系自動車メーカーが中心である。特に、トヨタ系企業へはJITで1日4回の納入体制をとっている。
原材料である樹脂は、日系メーカー又はマレーシアから調達している。一部の特殊な材料は日本から調達している。調合はインドネシアで行っている。樹脂以外の原材料の調達は国内ではできないために、シンガポール、マレーシア、タイから調達している。従って、発注から納入までのリードタイムは3ヶ月になっている。
工場の中は、整然としており、5Sが実践されている。しかし、まだまだ彼らの生活や習慣とバランスが取れていない面があり、監督者は苦労が多いらしい。やらなければならないとわかりながらも、まだ十分でない部分があり、毎日が5Sとの戦いであるという。

工場内では、部品を持ち出すなどの盗難がときどきあるらしく、重要部品は事務所内で別に管理する必要があるという。また、仕事の中でもなかなか自主的に改善をしようという動きはなく、マインドもないという。ただ、トイレを拝借したが実にきれいであった。さすがに日系企業であると思った。管理されていることが良くわかる。赤道直下にある工場だが、事務所以外はクーラーの設備はされていない。訪問した際は、それほど暑さを感じなかったが、真夏は相当な暑さになるだろうと思われる。

工場内の各種の表示はインドネシア語である。「新製品を納期どおりに完成させよう」と言うスローガンがインドネシア語で書かれ、天井から下げられている。作業指導書は、一部日本語そのままのものにインドネシア語を追加したものを使用しているという。

この工場の設立に当たって、フィージビリティスタディの際、職業訓練学校とアイムジャパン(IMM JAPAN)の存在を知り、卒業生を採用し、製造技術別に技術と管理手法を指導し、現地語で作業者に指図する体制をとった。工程の係長に、これらの研修卒業生を当てており、我々の見学の際も彼らが中心となって日本語で案内してくれた。作業指導書が日本語で使用されるのも彼らの存在が大きいようである。

 組立工程では、多能工化を推進しており、3〜4名のグループ構成で仕事をする体制を取っている。工程不良率は10%と高く、まだ満足するレベルに達していない。当面5%を目標にQCサークル活動も実践中である。検査部門では、限度見本の管理をきっちり行っており、検査する際には手袋を使用して作業を行っている。これからの品質向上に期待できそうである。

パラマウントベッドインドネシア
1995年設立の100%日本資本の会社である。製品は、医療用ベッドと介護用ベッドの製造をしており、従業員数は、約130名、日本人スタッフ3名が常駐している。この種のベッドは、まだ価格が高く、インドネシアでは使ってくれないために生産量の98%を輸出、国内向けは2%である。
1998年にISO9002を取得、2002年にISO9001:2000も認証取得している。5SとホウレンソウとISO9000の組み合わせ管理は大変ユニークである。工場内には、ローマ字で記載されたHOURENSOU、5S,ISO9001を組み合わせたキャンペーンシートを掲載し、注意を喚起している。

生産体制は、一直で交代制はまだおこなっていない。現在の従業員の定着率は、約90%で毎年10%くらいは辞めてゆく計算になるという。しかし、ここでも正式社員は解雇できない問題があり、短期で契約する社員も15名ほどいる。この会社においても、職業訓練学校CEVEST卒業生を採用している。すでに8名を採用したが、現在は4名が働いている状態である。

工場内は整理整頓が実によくなされている。日本の工場と変わらない管理状態にある。製品や部品を置く場所と通路が白線できれいに仕切られており、使用工具の保管位置も明確に定められており、5Sが徹底していることがすぐにわかる。入社と同時に日本語を教え、5Sの指導から始めるそうである。ここでも5SにCEVESTの卒業生が活躍している。

 塗装工程と溶接工程の作業者には、汚れることと特殊技能に対して特別手当として10,000ルピア(約¥150)を支払っている。原材料の73%がドイツなどからの輸入になっている。日本からの輸入でないのは、特殊な部品を使用していることによる。板金プレスの工程と塗装工程、組立工程が主体である。塗装工程があるために、廃液、排水、粉塵について、6ヶ月に一度の政府からの検査が行われている。また3ヶ月に一度は、労働検査として、労働状態、安全衛生についても検査が実施されるそうである。労働者に対する保護のために、この種の検査は結構厳しく実施しているようである。

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