その101
気が利かないレストランのウエートレス

研修旅行も半ばになり、インドネシア料理にも飽きがきたので、中華料理を食べたいということになった。30名ほどの団体ということもあり、諸般の事情を考慮して大きなホテルのレストランに予約を入れた。
テーブルは4卓。まず、飲み物と言うことでビールとアルコールに弱い人のためにウーロン茶を注文する。型どおりに全員で乾杯し、歓談に入った。しかし、飲み物がなくなってもウエートレスが注文を取りに来ない。テーブルから少しはなれて立ったままである。ウエートレスを呼んでビールを注文したら、今度はビールの大瓶が大量に運ばれてきた。テーブルの人の数だけある。全く客の要求を理解していない。少しでもグラスが空くとすぐに注ぎにやってくる中国の深せんや上海の中華レストランとは大きな違いである。
料理についても同じであった。料理は係りがすでに注文してあって、前菜が運ばれてきた。味はまずまずであった。取り皿や料理の出し方もまずまずである。インドネシアのサービスはこれが標準的なレベルかと安心した。ところが、次の料理が出てこない。前菜の皿は空っぽで、すきっ腹が次の料理を要求している。ウエートレスに料理を早く次の料理を出すようにと頼んだ。そうすると驚いたことに、一度に三皿も四皿も続けて運ばれてくる。そしてテーブルの上には料理が並ぶ余地がなくなってしまった。

サービスについてほとんど教育されていないようである。ウエートレスもスタッフも気を利かせない。これが日系の大きなホテルのレストランの実態である。今回の旅行の幹事もあきれて日本人のマネジャーに文句を言っていた。我々が急ぎすぎるのか、要求レベルが高すぎるのか。中国と比較するのは不適切かもしれないが、サービス精神は比較にならないほど低く、気も利かない。従業員が少ないわけではない。「言われたことしかやらない」という言葉があるが、それを裏書するようなサービスの悪さであった。

インドネシア旅行中にイラク戦争が始まった。バリの爆破事件以来、観光客が減少しているが、この戦争開始でさらに観光客が減少している。有名なホテルでも客室は20〜30%位しか埋まっていない。ホテルのほかのレストランもガラガラで、お客よりも従業員の方が多いくらいである。このような中でのサービスの悪さである。聞くところによれば、このホテルでは最盛期に採用した従業員を、客が少なくなっても解雇できないため十分すぎるほどの従業員を雇っていると言う。インドネシアの労働法により、過剰に保護されて労働組合が異常に強くなっていることが原因らしい。仕事をしなくとも解雇されない。サービスの悪い原因はその辺にありそうである。顧客の少ない時期は、サービスが良くして顧客を増やす。これが普通の考え方であるが、インドネシアには当てはまらないようである。お客が多かろうと少なかろうと言われたことしかやらない。これがインドネシア式サービスである。

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