その2 大きく変る中国 |
今から10年ほど前、私は何度か中国の国営企業を訪問した。会議室に通される前に、事務所の前を通る。ドアは開いていて数人の中国人が、所在なげにテーブルを囲んで座っているのが見える。話しをするでもないし、仕事をしている様子もない。二時間ほど打合せをして、帰り際にその前を再び通った。すると来た時と全く同じ姿で座っている。2時間ほど同じままのようだ。これに近い光景を何度か見た。 当時、中国の国営企業では働いても働かなくても給料は変わりがない。差がつかない。できるだけ自分のところに仕事が来ないように来ないようにと避けている。同じ給与ならば、苦労はしたくない。退社時間がくるまでじっとしんぼうをして待つ。退社時間がきたらさっとかえる。 従来は、「中国ではこの程度しか作れない。」とか、「中国では、これで問題ないではない。」などと反論ばかりで改善することは期待できなかった。今は違っている。勿論一部の民営企業である。「日本企業のいう通りやればいいものが作れるし、売れる。」と理解し、どんどん良いものが作られはじめている。このまま、中国の安い労務費で品質の良いものが供給され始めたら日本の製造業も大変である。価格競争にはとうてい勝てなくなる。 これらの企業の経営者や品質管理のマネジャーは非常に若い。学校を卒業したばかりで、二十歳代か、三十歳代の始めである。良く考え、良く働き、良いものを作る。そうすれば、収入も増え、生活が良くなると分かっている。働くのは損だという考えは全く持っていない。古い体質の国営企業の作業者とは心構えも大きく違う。 |