その98
インドネシア
職業訓練学校訪問記 (2)

職業訓練学校についてもう少し詳しく記しておきたい。この学校の正式の名称は、「The Center for Vocational and Extension Training」(CEVEST)と言い、ジャカルタにある。1983年国際協力事業団(JICA)の援助で、職業訓練校の指導者の訓練校として設立された。この学校の校長であるロベルト氏は、日本の八王子や相模原での研修を受講した実績を持っている。
この学校へ入学するためのインドネシア各地での採用は結構厳しい。受験資格は、高校卒業の場合は、20〜25歳、短大卒業の場合は20〜27歳であり、体力、学力のテストがあり、更に面接がある。まず、体力では身長160cm、体重50kg以上が条件となる。訓練学校における訓練と日本での研修に耐えられる強い体力を持つことが要求されるからである。インドネシア政府によって各地で採用された研修生は、ここで4ヶ月間、日本語や日本の文化や習慣など基本的な知識を学ぶ。全寮制で、休日の日曜日を除き、5時起床、朝の8時から夕方5時までの10時間、日本語の教育、日本文化などを学習する。マラソンなどの体力強化もある。土曜日の午後は、校定敷地内の清掃をするなど、日本語教育以外の文化や精神的なものも学ぶ時間となる。
全員丸刈り、坊主頭に服装は、白の半そでワイシャツに黒いズボンと靴下、そしてネクタイをきっちり着用する。日本の高校生の一部に見られるズボンをずり下げたような乱れた学生の姿はない。そして、受講する態度もきびきびしており、実に礼儀正しい。

全員、あまり資質の良くないテキストとノートブック、ボールペン、そしてインドネシア語と日本語の辞書を持っている。これらを使って、教室の床に座っての学習となる。2ヶ月もすると簡単な会話と「ひらがな」と「カタカナ」は、書けるくらいに上達する。しかし、「漢字は本当に難しい」とは彼らの率直な感想であった。この職業訓練所における研修を修了すると日本に行って実務研修と技能研修が受ける資格を得ることができる。

 この訓練校からの日本への派遣は、毎月約200名、今年で11年目になり、派遣人員はすでに20,000名を越えたそうである。そして、現在日本に派遣中の研修生や実習生は約6,500名いるという。インドネシアの人口は約2億1千万人。日本の5倍の面積で且つ、多数の島から構成される。その中での比率はまだまだ小さいが、育まれたその力は少しづつ国全体に影響を与え、将来大きな力になってくると期待されている。

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