その96
中国以上に期待できる企業進出先
 インドネシア・バタム島

バタム島は、シンガポールとスマトラ島の間にあるインドネシアの小さな島。シンガポールの南東約20キロメートルに位置し、フェリーでわずか40分のところにある。シンガポールやマレーシアに毎日100便以上のフェリーが就航しており、インドネシア政府も海外からの投資支援など非常に力を入れており、脚光を浴びている島である。
バタム島は、シンガポールから近いために、その存在は香港の近くの深?や東莞に相当する。
機械、設備、部品材料に対する輸出入税は免税、輸出目的の製造業者への付加価値税も免税となっている。さらに対アメリカへの輸出にはバタム島の製造であっても「Made in Singapore」と見做すなどのメリットを受けられる。為替については、米ドルとシンガポールドルでの決済が可能であり、従来のように不安定でリスクの大きかったインドネシアルピアでの決済もない。さらに海外送金も自由であり、この点で不都合の多い中国とは大きく異なっている。

現在バタム島には、14箇所の工業団地があり、島内で製造された製品や部品はシンガポールへ送られ、シンガポール港から世界各地へ輸出するというロジスティクス面のインフラストラクチャーも揃っている。通関は24時間体制であり、更に港が整備されれば、直接国際航路に結びつ可能性も期待されている。
新しく工場建設するについても、豊富な工場団地のメニューの中から、大企業から小企業まで必要な規模に応じて工場の建物や従業員社宅や寮の敷地の手当てが可能である。
現在の人口は約46万人、労働者は17万人で労働者用の住居やそれの伴うショッピングモールなどの設備は急ピッチで建設が進められる様子が、メインの道路からも伺われる。
労働者はシンガポールとインドネシア各地からの出稼ぎが多い。必要となれば、新しい労働者は、口コミですぐに集まる。中堅技術者の養成のために、2000年に島内に工科短期大学も設置され、2004年から毎年1000人の卒業生を企業に就職させることも可能になる。心配される新しい工場の管理者や監督者は、シンガポールで教育した人たちを当てることができる。病院の設備も国際レベルでシンガポールの病院と提携しており、そのレベルも高い。
ある日系企業では、従来のシンガポールの工場で教育した中間管理職や監督者をバタム島に送り込み、製造活動の効率を上げている。シンガポールに住んでフェリーでバタム島へ毎日通勤することも可能で、実際そうしている監督者や管理者も出始めている。これからの日本からの進出企業は、シンガポールで教育された人材を雇うことで、わざわざ日本人管理者や監督者を送り込む必要なく生産活動が開始できる。

このようにバタム島は、インドネシアの土地不足とシンガポールの高労働賃金問題解決に適した労働集約型企業の進出地になっている。シンガポール政府とインドネシア政府間の協力で開発されたバタミンド工業団地(BIP)を見ると、工場の建物は、大企業向けの独立型3階建て工場のAタイプ(9,200u)から、Bタイプ(2,000u)のBタイプ、小企業向け約1,000uのCタイプ、さらに独立型5,500uのDタイプまで取り揃えて企業規模に応じて選択可能になっている。これらのほかに団地の住居施設として寮やアパート、公共施設としてショッピングセンター、フードコード、レクリエーション設備(プールやテニスコートなど)も準備している。
バタミンド工業団地では、事業の許可から、人材募集、出入国管理、通関、施設管理、さらに貨物輸送まで手間のかからないワンストップサービスも可能となる。現在、住友電工、横河電機、TEAC,松下、三洋などの日本の輸出向け製造業がすでに入居し生産に従事しており。この工業団地の管理は日本の商社が行っており、視察も交渉も直接日本語で可能なメリットがある。政府関係との交渉なども、経験豊富な商社の方の知識も借用できる。日本国内の工業団地と錯覚するほどである。
現在、中国への進出ラッシュで日本の中小企業の目は中国に向いているが、企業の種類や規模と出荷先によっては、このバタム島は、もう一度検討の余地があると思われる。幸い、インドネシア政府も今年(2003年2月)に外国からの投資を促進するために「2003年投資イヤー」を宣言した。この新しい政府の方針もバタム島を含むインドネシアへの進出を後押しするものと期待される。

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