その95
マスクで差別化する
中国華南のスーパー食品売り場

中国華南地域の深センや広州にも、日本と同じようなスーパーマーケットがいくつか開店し、益々増える傾向にある。これらの大型店舗は、比較的生活レベルの高い、中流以上の収入の高いクラスの中国人を対象としている。

デパートやスーパーの一階や地下一階には、どこも食材の売り場が配置されてる。外の暑さが30度をこえるにもかかわらず、スーパーの中はクーラーが効いていて、大変快適である。冷蔵タイプのショウケースに各種の握りずしも並べられ、単品で好きなだけ購入できる。近くには食事ができるテーブルといすが並べられている。勿論、持ち帰りも自由である。まだ種類は多くはないが、これらの握りずしは、日本人向けではなく、中国人向けである。

すしは、スーパーの更に内部のガラス張りの部屋で握られる。すしを握っている店員は全員マスクを着用している。握りずしだけでなく、コロッケなどの揚げ物や野菜サラダなど加工せずに食べられるお惣菜を扱う担当者はみんなマスク姿である。マスクをして作る店員は、来店する客の方からよく見えるようになっており、完全に顧客の目を意識した部屋の配置である。今回、深セン、広州の4店舗をまわってみたがみなどこでも同じである。店員の中にはマスクの位置が少々ずれているご愛嬌もあるが、マスク着用の教育は徹底している。

一方、スーパーの裏通りには、屋外でガス調理コンロを並べて料理をしている食堂がある。30℃を越す真夏の暑さにもかかわらず、エアコンの設備はない。簡単なテーブルといすを並べただけのところで暑い中、汗を流しながら食べる。少しくらいの雨が降っても、ヒサシを出すだけであまり気にする様子もない。店先では店の主人や奥さんが大きな声で呼び込みをする。そこではマスクをするどころか、大声を張り上げ、つばを飛ばしながら客を呼び込んでいる。食器を洗う水はあまり交換する様子もなく、濁っていて、とても清潔とはいえない。それでも味が良いのか朝、昼、夜の食事時には客足が絶えないほど繁盛している。

これらのスーパーは、欧米、日本などの外国資本である。全体のレイアウトはもちろんのこと、品揃えや価格の表示、展示方法も、欧米や日本のスーパーのやり方とほとんど変わらない。中国の新しいスーパーマーケットの店員へのマスクの着用は、競争の激しくなったスーパーの清潔を売り込み、従来の食堂と差別化するデモンストレーションのひとつになっている。中国、香港系の資本のスーパーではまだマスク姿は見ることが少ない。中国は1ヶ月見ないと大きく変わるといわれるが、このようなマスク姿は清潔に対する中国の大きな変化の一つである。

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