その94
華南でがんばる日系スーパー 

香港に隣接する深センや東莞、珠江デルタの先端にある珠海、そして、昔から交易会の伝統のある広州など華南地区の発展はすさまじい。これらの各都市は、広東省に属し、片側3車線の立派な高速道路で結ばれている。この広東省だけで、約9000万人の人口がある。経済発展を続ける華南地区の広州市、東莞市、深セン市、佛山市、中山市、珠海市は、毎月の一人当たりの可処分所得は1000元(約16000円)を超え、周辺部の農村地帯では年収が1000元に満たない地域もある中国の中でも特出している。この購買力を狙って、大型ショッピングセンターが各都市に出現している。日本系列のジャスコ、最近日本でも西友に資本参加したウオルマート、そして、カルフール、マクロ、トランスマートなどである。現在建設中の店舗も含めると、その数は70店舗を超える。

この中のジャスコ、カルフール、ウオルマートを巡回してみた。そこに展示され販売されている商品は日本のスーパーマーケットで販売されているものと大きく変わりはない。商品の展示方法や品揃えなど、商品の豊富さも変わらない。エレベータやエスカレーターもあり、バックグラウンドミュージックも流れている。お金を支払うレジの並べ方や配置もあまり差はない。中国を紹介する際によく出てくる食材市場(マーケット)では、生きた鶏やウサギなどそのまま販売しているが、このスーパーマーケットでは、従来の市内の食品販売形態とはまったく異なり、魚以外はほとんどが加工されて販売されている。魚は新鮮さを要求されるらしく、食品売り場の一部には、生きた魚を生簀に入れて売り物にしている。肉類は日本のスーパーで購入するような加工して発泡スチロールの皿に盛り付けしたものが並んでいる。

日本と異なる点を言えば、日用品の展示などスチールのラックやフォークリフト用のパレットをそのまま商品展示に使用していることである。また、天井の配線や配管をむき出しにしたままにしているところもあり、雑然とした感じはぬぐえない。天井のむき出しはともかく、スチールラックは塗装がされており、よく観察しないとその雑然さに紛れてしまって、スチールラックであることに気づかれないほどである。しかし、これらの雑然さも改善されるのは時間の問題だろう。

日系のジャスコでは、創業当時は、日本からの商品を中心として高級なイメージを保つために差別化戦略とってきたが、中国製品の品質が向上した現在では現地の商品を主体に並べるまでに変わってきている。カルフールやウオルマートという欧米系の企業に対して、日系ジャスコは、展示する棚に工夫を凝らし、雑な感じを排除し、スマートさを売り物にする作戦である。また、顧客に対する丁寧で決めの細かい対応を徹底することで勝負する作戦をとり、従業員への指導を厳しくしているとのことである。中国商品を扱いながら日本企業らしさを強調する。激しい競争時代に生き残るために少しでも他の店舗に差をつける戦略を考えている。中国華南地区におけるジャスコのこれからの発展が楽しみである。

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